2022.7.29
, EurekAlert より:
サルコペニア肥満は、高齢者の軽度認知機能障害や認知症のリスクを高める可能性があるようだ、という順天堂大学からの研究報告。
生活習慣病のリスクを高める肥満は、特に高齢者においてはしばしば筋肉量の低下を伴っている。このような肥満のことをサルコペニア肥満と呼んで、最近フレイルなどと共に、高齢者の病態として特に注目が集まっている。
今回、研究チームは、サルコペニア肥満が認知症のリスクの上昇に関連しているかどうかを検討した。ここでは、研究者らは、サルコペニア肥満を、BMI(体格指数)と筋力(握力)によって定義している。
「もしサルコペニア肥満が認知症のリスクと関連しているなら、高齢者のサルコペニア肥満を減らせば認知症のリスクも減る可能性があります」と主任研究者の田村好史教授は語っている。
研究チームは、文京区健康研究に参加した65-84歳の高齢者1,615名のデータを解析した。対象者をサルコペニア肥満の程度に応じて4群に分けた:「肥満のみ」「サルコペニアのみ」「サルコペニア肥満」「サルコペニアでも肥満でもない人(対照群)」。
研究では、種々の認知機能とサルコペニア、肥満との関係が解析された。サルコペニア(筋力の低下)かどうかは、握力を指標として決定された。握力が男性の場合28kg未満、女性の場合18kg未満をサルコペニアとした。BMIは、25以上を肥満とした。認知機能については、モントリオール認知検査が22点未満の場合をMCI(軽度認知障害)とし、精神状態短時間検査が23点未満の場合を認知症とした。
今回の参加者の59.4%は肥満でもサルコペニアでもなかった。21.2%が肥満者、14.6%がサルコペニア、4.7%がサルコペニア肥満だった。
データ解析の結果、サルコペニア肥満の人が、MCIまたは認知症と診断される可能性が最も高いことが明らかになった。次いでサルコペニアのみの人、肥満単独のみに人の順に多く、対照群の人は最も少数だった。
年齢や性別などを調整した結果、サルコペニア肥満は、それ自体で、MCIおよび認知症のリスクを高めることが明らかになったという。また、サルコペニアは女性の認知症リスクを有意に高めた。男性にはこの関係は見られなかった。
「本研究は、日本人の高齢者において、BMIと握力で定義されたサルコペニア肥満というものが、軽度認知障害と認知症のリスク因子であることを、明確に実証しています」と田村教授は語っている。
「サルコペニア肥満と認知症に強い関連のあることが分かったので、サルコペニア肥満の治療法を開発することによって、認知症を減らすことが可能になるかもしれません。」
出典は『臨床栄養学』。 (論文要旨)
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