2022.7.27
, EurekAlert より: 
握力が弱いことは、根本的な健康問題の兆候である可能性がある。オーストリアにある国際応用システム分析研究所(IIASA)の研究チームは、加齢との関係を考慮しつつ、一般集団に適用されるカットオフポイントを開発したという。
ほとんどの人は、ピクルスの瓶を開けることに困難を覚えることはないが、握力はさまざまな健康状態の効果的なスクリーニングツールである。握力が弱いことは、高齢者の根本的な健康問題の兆候である可能性があるが、それは若年成人においても同様であるという。多数の研究により、握力が弱いことが心臓や肺の問題に関連する健康状態の兆候である可能性があることが示されている。握力が弱い人は平均余命が短いこともいくつかの研究でわかっているという。
けれども、これまで臨床診療において、一般集団に適用される経験的に意味のあるカットオフポイントが存在しなかった。そのためには、握力と性別および身長との相関関係、および通常の加齢による握力の低下を考慮する必要があった。
研究チームは、米国の50-80歳の8,156名の男女を対象に握力を測定し、9年間の追跡調査によって死亡リスクを推定した。
握力は、ダイナモメーターを片手で握って測定した。この研究では、患者は両手で2回の試行を行うように求められ、測定には最良の試行が使用された。測定には特別なプロトコルが用いられた。立った状態か座った状態かといった様々な違いが測定値に反映するためである。
データ解析の結果、握力のわずかな低下でさえ、死亡リスクに実質的な影響を及ぼすことが明らかになったという。
基準群を[0.0 SD, 0.5 SD]とした場合(SDは標準偏差)、60歳で標準化された握力が[-0.5 SD, 0.0 SD]であることは、平均余命を男性で3.0年、女性で1.4年短くした。握力が[-1.0 SD, -0.5 SD]であることは、男性で4.1年、女性で2.6年の短縮と関連したという。
対称的に握力が強いことには生存期間を延長する効果は認められなかったという。
「握力は安価で簡単に実行できるテストですが、健康上の問題やその他の根本的な健康状態の早期診断に役立つ可能性があります。高齢者(そして実際には中年の人々も)の握力を監視することは、高齢者の公衆衛生に大きな利益をもたらす可能性があります。私たちの調査結果は、握力が根本的な健康状態の非常に正確で敏感な尺度であることを明らかにしています。したがって、医療現場でのスクリーニングツールとして使用することをお勧めします」と研究者はコメントしている。
「もっとも、本研究が死亡リスクを減らすために人々に握力の強化訓練を勧めるものではないことを指摘することは重要でしょう。おそらく誰かが運動で握力を強化しても、全体的な健康状態に対する効果は全くないかあってもわずかです。けれども、握力が弱いことは、筋力低下の反映として、重度の障害の指標であるのです。長期的な健康改善には、健康的な生活習慣と運動が依然としてベストのアプローチです。」
出典は『BMJオープン』。 (論文要旨)
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