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[高齢者]  食事と認知症の研究を改善するための取り組みを提案
2022.7.25 , EurekAlert より:   記事の難易度 1
  

食事が認知症に及ぼす影響に関する臨床試験の在り方についての提言。米国サザンカリフォルニア大学のフセイン・ヤシン准教授らによる個人的視点欄記事。

多くの観察研究によって栄養学的因子が認知機能に有益である可能性を示唆しているが、臨床試験においては食事やサプリメントは認知機能に殆ど影響しないことが報告され、結果の不一致が浮き彫りになっている。

「これは、因果関係がないか、これらの研究が適切に設計されていないことを意味します」とUSCケック医学校の医学・神経学の准教授であるフセイン・ヤシン医師は述べている。

疫学研究と臨床試験の間のこの矛盾を理解するために、ヤシン准教授らは、栄養と認知症のリスクに関する既存の文献を調査した結果、栄養が脳に及ぼす影響を測るための既存の臨床試験における主要な制限を同定し、将来の研究を改善するための一連の推奨事項を明らかにした。この研究は、米国国立衛生研究所(NIH)からの助成金によって支援された。

ヤシン准教授によれば、栄養研究は一般的にうまく実行するのが難しい分野であるという。疫学研究は、例えば、鮭などの脂肪の多い魚介類を食べることと認知症の発生率の低下との関連を示している。しかし、栄養情報を、居住地、健康的な生活習慣、適切な医療環境といった他の重要な因子から分離するのは困難である。

健康的な食事が認知に影響を与えるのにどれくらいの時間がかかるかは不明であるため、食品と脳の健康に関する臨床研究のほとんどは、結果が意味のあるものになるのに十分な期間にわたって実施されていない可能性があるという。「それが5年から10年かかる場合、2年以下の研究では、食事が認知に及ぼす影響を正確に反映しないだろう」とヤシン准教授は述べている。

将来の研究は特定の栄養素が脳に及ぼす影響への理解を深めるだろう。たとえば、骨の健康を維持するビタミンDの推奨量は知られているが、認知機能を維持するそのような栄養素の推奨量などは不明である。

研究チームは、認知機能検査よりもバイオマーカーを使うことが、より長い介入期間を必要とするこの種の臨床試験では有用であろうとしている。脳イメージングのような技術は、脳の時系列的な変化を追跡するのに極めて効果的であろう。同様に血液・糞便検体による検査も有用である。

アポリポたんぱく質E4(APOE4)のような遺伝子マーカーもまた強力なツールのひとつである。この遺伝子の変異をもつ人は食事に対する反応が他の人とは異なっているので、遺伝子検査はより個別化された介入による研究の質を高めるのに役立つであろう。

腸内細菌叢の解析も研究のアウトカムを改善するのに役立つ。ヤシン准教授は、人々が食事から受ける恩恵は、彼らの腸内細菌叢によって変わってくるだろうと述べている。ただし、多様な人々を含む大規模集団における腸内細菌叢と認知機能関係については更なる研究が必要である。

最後に、研究チームは、ランダム化対照臨床試験だけでなく、よりバラエティに富む研究デザインの採用を考慮すべきであるとしている。また臨床試験の参加者の選択についてもより熟考すべきであろう。

ひとつの戦略として、小規模で個別化された臨床試験によって、参加者の遺伝的リスク、食事のクオリティ、腸内細菌叢の解析、脳機能を反映する種々のバイオマーカーの測定することもできる。別のアプローチとして、スマホやタブレットを利用した大規模で実際的な電子健康臨床試験を考えることもできる。

これまでの多くの研究が高齢者に焦点を当てているが、いくつかの質の高いコホート研究は、認知症に関連する変化が始まる前の、中年期がそのような研究を開始するのに最適である可能性を示唆している。

出典は『ランセット健康長寿』。 (論文要旨)      
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