2022.7.21
, EurekAlert より:
歩きながら作業すると、どちらも影響を受け作業効率が低下すると長い間考えられてきたが、米国ロチェスター大学の研究チームは、いつもそうとはいえないことを発見したという。一部の若くて健康な人々は、歩行中の認知タスクのパフォーマンスを、神経リソースの使用を変えることによって改善するようだ。
「私たちがテストする前に、誰がどのカテゴリーに分類されるかについての予測はありませんでした。最初は、誰もが同じように反応すると思っていました」と筆頭著者のエレニー・パテラーキ博士は述べている。「一部の被験者にとって、各タスクを個別に実行するのに比べて、デュアルタスク(複数のタスクを実行する)を実行する方が簡単だったのは驚きでした。この分野のほとんどの研究では、同時に実行しなければならないタスクが多いほどパフォーマンスが低下することが示されているため、これは面白くて予想外でした。」
研究チームは、18-30歳の健康な参加者26名を対象に、モバイル脳/身体イメージングシステム(MoBI)を使用して、椅子に座っているか、またはトレッドミルで歩きながら、一連の画像を見せ、そのときの脳内活性、キネマティクス、行動を観察した。参加者は、画像が変わるたびにボタンをクリックするように指示された。同じ画像が連続して表示された場合、参加者はクリックしないように求められた。
座っている間のパフォーマンスをベースラインとして、歩行中にタスクを実行したとき、一部の人々は以前から予想されていた通りパフォーマンスが低下したが、別の人々ではパフォーマンスは座っていた時よりも改善した。脳波(EEG)データから、歩行中のタスクが改善した14人の参加者では、改善しなかった12人の参加者には見られなかった前頭脳機能の変化がみられることがわかった。タスクが改善した人々によって示されたこの脳活動の変化は、脳の柔軟性または効率の向上を示唆するものだという。
「肉眼では、参加者に違いはありませんでした。彼らの行動と脳活動の分析を開始するまで、グループの神経シグネチャーに驚くべき違いがあり、複雑なデュアルタスクプロセスを異なる方法で処理する理由はわかりませんでした」とパテラーキ博士は述べている。「これらの調査結果は、神経リソースの柔軟性が損なわれ易い集団に応用できる可能性があります。」
この研究を高齢者に拡大することで、研究者らは「スーパーエイジャー」または認知機能の低下が最小限の人々の潜在的指標を同定ことができるかもしれない、と研究チームはみている。このマーカーは、神経変性疾患で何がうまくいかないのかをよりよく理解するのに役立つことだろう。
出典は『大脳皮質
』。 (論文要旨)
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