2022.7.15
, EurekAlert より:
工業化された集団とされていない集団からの乳児腸内細菌叢には、堅牢かつ体系的な生活習慣に依存する違いがあるようだ、という米国スタンフォード大学からのメタゲノム解析による研究報告。
著者らによると、この乳児の微生物叢の組成と機能における集団固有の違いは、富裕な工業国以外の人々からの微生物叢を研究することの重要性を強調するものだという。
ヒトの腸内細菌叢は、出生直後からの複雑なプロセスを経て出来上がり、成人後の微生物叢の組成は乳幼児期に獲得した微生物種に左右される可能性が高い。先進工業国の乳幼児ではこのプロセスはよく特徴付けられており、一連のステップをたどって最終的に多様性の低い腸内細菌叢ができる可能性が高いという。
けれども、工業化されていない国の人々にはしばしば特徴的に多様性の高い微生物叢がみられるが、これまで、こうした国々の乳幼児における微生物叢の形成プロセスはよくわかっていなかった。
今回研究チームは、タンザニアに住む現代の狩猟採集民であるハヅァ族からの乳児糞便検体に対してディープメタゲノム解析を実施した。
18集団からの健康な乳児の糞便検体に由来するrRNA配列のグローバルなデータセットを比較した結果、研究チームは、生後6か月で、対照的な環境に住む乳児の微生物叢は、同様のビフィズス菌が優勢な集団とは異なることがわかったという。ハヅァ族のサンプルで検出された細菌種の大部分(20%以上)が新規であり、これらの多くは工業国の子供たちのサンプルでは検出されなかったという。
非工業国の乳児の腸内細菌叢の顕著な多様性は人生のきわめて初期に現れるものであり、それは母体から周辺環境の影響を受けながら移行してくるものであるようだという。この違いは地理的なものではなく生活習慣によるものであるようだ。
「我々の研究結果はまた、生活習慣に特異的な腸内細菌叢の発達の違いが、慢性炎症などに由来する工業国で一般的な疾患にも関連しているのか、という疑問を呼び覚ますものである」と研究チームは述べている。
出典は『サイエンス』。 (論文要旨)
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