2022.7.12
, EurekAlert より:
舌に弱い電流を流すことで塩味の感覚を刺激する、箸のような形の器具を日本の明治大学などのグループが開発した。この「電子箸」により3割もの減塩が可能かもしれないという。
先行研究から、舌に弱い電流を流すことで塩を構成する荷電イオンに影響を与え、塩味その他の味覚を抑制/強化する方法がわかっている。今回の研究は、減塩食を摂取している人が電気的な味覚刺激を用いて塩分摂取量を減らせる範囲を調査した初めてものだ。
塩分を控えた食事でも、まるでしっかりと塩味ついた食べ物を食べているのかのように食事を楽しめる方法となりえるかもしれない。
「多くの人がWHOが推奨する塩分摂取基準量の約2倍を摂取しています」と筆頭著者である明治大学大学院 先端数理科学研究科の鍜治慶亘氏は述べている。
「この基準は、減塩に多少の努力を払うというだけでは達成することができず、抜本的な解決策が不可欠です。この研究は、電気刺激によって塩分を30%削減できることを示唆しているため、重要なアプローチです。」
本研究では減塩食を摂っている人を対象に、「電子箸」で舌を軽くたたいてもらい、その後、塩分量の異なる数種類の塩味のゲルを試食してもらった。すると、低塩分のゲルと、それよりも塩分含有量が40%以上高い対照サンプルとを同程度の塩味に感じたという。言い換えれば、なんの苦も無く30%の減塩ができたということだ。
次の実験では、対象者に電子箸による刺激後、減塩味噌汁を飲んでもらったところ、口当たりや味が良いと感じるようになった。電気的な味覚刺激はうま味にも影響を与える可能性があるとのことだ。
鍛冶氏は、長期的な目標として、減塩食を摂取している人や塩分摂取量を減らしたい人が毎日使用できる、市販の箸型の器具を開発したいとしている。
また彼の所属する研究室では、バーチャルリアリティ体験の一環として味覚を刺激するなど、他の分野での応用を検討している。
「将来的には、食べ物や飲み物の味を仮想的に再現したり、従来の食体験では実現しにくい味の表現を実現したりできるようになるかもしれません」。
出典は『バーチャルリアリティの最前線』。 (論文要旨)
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