2022.7.1
, EurekAlert より:
人間は、自分と似た体臭を持つ人と友情を深めやすい傾向のあることが明らかに。嗅覚は、人間の社会的相互作用において想像以上に大きな役割を持つ可能性が示唆された。イスラエル・ワイツマン科学研究所の研究。
犬を散歩させたことのある人なら誰でもわかると思うが、犬は、向こうからやってくる他の犬が味方か敵かを遠くから見分けることができる。迷う場合は、2匹の犬が出会ったとき、まずは慎重かつしっかりとお互いを嗅ぎ、一緒に遊ぶのか、全面戦争に突入するかを決めるだろう。社会的相互作用における嗅覚が果たすこの支配的な役割は、人間を除くすべての陸生哺乳類で広く立証されている。この行動は人間に無い、または有っても隠れているのだろうか?
これに関連する証拠が先行研究から2つ示唆されている。第一に、人間はほとんど無意識のうちに常に自分自身のにおいを嗅いでいる。第二に、人間はしばしば無意識のうちに他人のにおいを嗅ぐ。さらに人は、外見、背景、価値観、さらには脳活動などの評価においても、自分と似た人と友達になる傾向があることが知られている。
そこでワイツマン科学研究所のラブレビー教授は、人間が無意識のうちに自分自身や他の人のにおいを嗅ぐとき、潜在意識の中で比較を行っている可能性があり、自分と同じ匂いを持つ人々に引き寄せられる可能性があると仮説を立てた。
この仮説を確かめるために、教授らのグループは「すぐに意気投合した友達」のペアを募集した。このような友情はお互いをよく知る前に生まれるので、体臭などの生理学的特性によって特に影響を受ける可能性があると仮定したのだ。次に、これらのペアから体臭サンプルを収集し、2つの実験を行って、サンプルをランダムな2人組から収集したサンプルと比較した。
一方の実験では、電子嗅覚システムを使用して比較を行い、匂いの化学的特徴を評価した。もう一方では、人間の知覚によって測定された類似性を評価するために、ボランティアに2つのグループの体臭サンプルの匂いを嗅いでもらった。するといずれの実験でも、「すぐに意気投合した友達」のペアの方がランダムな二人組に比べて類似性がみとめられた。
次の実験では、電子嗅覚システムを用いて初対面の二人組の体臭の類似性を調べたうえで様々な共同作業を行ってもらい、お互いに友情を感じるようになるかを調べた。というのも、先の実験で友達同士が似た体臭をもっていた理由が、単に同じような食事をとっていたり、同じような行動をとったことによる可能性もあり得るためだ。
実験の結果、体臭の類似性が高いと判断された2人は、その後相手を好ましく感じ、友達になりたいという思いが強くなることが明らかになった。このように友情が生まれそうかどうかについては、電子嗅覚システムと計算モデルにより、なんと71%の精度で予測ができたという。言い換えれば、体臭には見知らぬ人同士の社会的相互作用の質を予測できる情報が含まれているようだ。
出典は『サイエンスアドバンス』。 (論文要旨)
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