2022.5.30
, EurekAlert より:
注意欠陥多動性障害(ADHD)の子供が果物や野菜が豊富な食生活を送ることで、症状を緩和する一助となる可能性が示された。米オハイオ州立大学の研究。
この研究では、ADHD症状のある134人の子供たちの親に依頼し、90日間にわたって子供の食べた典型的な食べ物についての詳細な質問票に記入してもらった。さらに別の質問票を用いて、集中力を維持できない、指示に従わない、物事を覚えるのが難しい、感情の制御が難しいなど、子供たちの不注意の症状(ADHDの特徴)の評価を依頼した。
研究担当者のイレーヌ・ハツ准教授は、本研究結果は、より多くの果物と野菜を摂取した子供たちがそれほど深刻な不注意の症状を示さなかったと述べている。「果物や野菜を含む健康的な食事をとることは、ADHDの症状のいくつかを軽減する方法のひとつかもしれません。」
本研究のデータは、「青少年におけるADHDの微量栄養素(MADDY)研究」から得られたもの。この研究では、6歳から12歳のADHDや感情の制御が難しい子ども134人を対象としている。
MADDY研究における、サプリメントの有効性を評価した研究では、微量栄養素を摂取した子供は、プラセボを摂取した子供よりもADHDと感情制御不全の症状に有意な改善を示す可能性が3倍高いことが示された。
さらに別の研究では、家庭に食料不安の問題がある子供ほど、慢性的な過敏、怒りの感情、怒りの爆発など、感情的な制御不全のより深刻な症状を示す可能性が高いことが示された。
これら3つの研究はみな同じことを示しているようにみえる、とハツ准教授。
「必要とするすべての栄養素を提供する健康的な食事は、子供たちのADHDの症状を軽減するのを助けることができます。ADHDの子供がより重篤な症状を示し始めたときに臨床医が通常行うことは、治療薬を服用している場合はその投与量を増やすか、そうでなければ投薬をはじめることです。私たちの研究は、子供たちの食物の入手状況と食事の質をチェックして、それが症状の重症度に寄与している可能性があるかどうかを確認する価値があることを示唆しています。」
<なぜADHDにとって食事がそれほど重要なのか>
研究者らは、ADHDは脳内の一部の神経伝達物質のレベルの低さに関連していると考えている。ビタミンとミネラルは、体がこれらの重要な神経化学物質を作るのを助け、脳全体の機能における補助因子として重要な役割を果たしている。 <食糧不安は付加的な役割を果たす可能性>
「お腹が空いたときは誰もがイライラする傾向があり、ADHDの子供も例外ではありません。彼らが十分な食べ物を得ていない場合、症状が悪化する可能性があります」。
また、子供に十分な食料を与えられないことを気にする親のストレスは、家庭内の緊張を引き起こし、ADHDの子供により多くの症状を引き起こす可能性がある。
MADDY研究は、北米の子供たちのADHD症状と食事の質との関係を最初に調べたものの1つであるとハツ准教授は述べている。
「臨床医は、治療計画を立てたり、変更する前に、ADHDの子供たちが食料を安定して入手できているかを評価する必要があると思います。一部の症状は、家族がより安定的に食料を確保し、より健康的な食事を提供できるようにすることで、より管理しやすくなる可能性があります。」
出典は『栄養神経科学』。 (論文要旨)
|