2022.5.16
, EurekAlert より:
不健康な食生活を送っていたうつ病患者が、色とりどりの野菜や豆類、全粒穀物や魚介類などを豊富に摂取する食生活に切り替えたところ、うつ病の症状に有意な改善が見られたという。若年男性を対象とした豪・シドニー工科大学の研究。
うつ病は、豪州において毎年約100万人もの人々に影響を与えており、自殺の重大な危険因子であるとともに若年成人の主要な死因となっている。
本研究の主任研究員であるベイズ氏によると、この研究は、若い男性(18〜25歳)のうつ症状に対する地中海式食の影響を評価した初のランダム化臨床試験であるとのことだ。
「私たちは、若い男性が新しい食事を採り入れることにどれほど意欲的であるかに驚きました」とベイズ氏。「地中海式食に割り当てられた人々は、栄養士の指導の下で、短期間で元の食生活を大幅に変えることができました。医師や心理学者は、うつ病の若い男性を、治療の重要な要素として栄養の専門家に紹介することを検討する必要性を示唆しています」。
この研究は、特定の栄養素、食品、食事パターンがメンタルヘルスに及ぼす影響を調査することを目的とした栄養精神医学の新分野に貢献している。本研究で使用された食事は、色とりどりの野菜、豆類、全粒穀物、脂の多い魚、オリーブオイル、生の無塩ナッツが豊富に含まれたものであった。
「ファストフード、砂糖、加工された哺乳類の肉の摂取量を減らしながら、新鮮な自然食品で食事の質を高めることに主眼を置きました」とベイズ氏は述べている。
「科学的に食べ物が気分に影響を与えると考える理由はたくさんあります。たとえば、私たちが幸せに感じるのを助ける化学物質であるセロトニンの約90%は、腸内細菌によって作られています。これらの細菌が、いわゆる脳腸軸(脳腸相関)により迷走神経を介して脳と通信できるという新たな証拠があります」
「有益な細菌を保持するには、豆類、果物、野菜に含まれる繊維を与える必要があります」
うつ病患者の約30%は、認知行動療法や抗うつ薬などのうつ病の標準治療に対して十分な効果がみられていないという。
今回の研究では、ほぼすべての参加者がプログラムをやり遂げただけでなく、多くの人は研究終了後もこの食事法を熱心に続けていたとのこと。このことは、彼らにとってこの方法がどれほど効果的で、許容可能で、価値があるかを示している、とベイズ氏は述べている。
出典は『米国臨床栄養学雑誌』。 (論文要旨)
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