2022.5.9
, EurekAlert より:
60歳代では若者に比べてフェイクニュースに騙されやすいということはなく、個人の資質によるようだ。ただし70歳以上になると判断能力が低下するため注意が必要かもしれないという。米・フロリダ大学などの研究。
この調査は、幅広い年齢層の高齢者のフェイクニュースの見極めと、若い成人との直接比較における分析的推理力、気質、ニュースに触れる頻度の役割を最初に示したものだ。
筆頭著者であるフロリダ大学のペリバノグル氏は、次のように述べている。「私たちは特にこれを調べたかったのです。なぜなら、加齢とともにほとんどの人が認知能力の低下を示すことがわかっているからです。しかし、一部の情報処理能力は維持されるか、または改善すらされることもわかっています。」
高齢者のフェイクニュースへの騙されやすさと、情報の信憑性を判断する能力を助けたり損なったりする可能性のある要因についての研究は少ない。先行研究では、2016年の大統領選挙中に、高齢者が若い成人よりもソーシャルメディア上で誤った情報を共有することが多いことを示唆していた。そして、COVID-19パンデミック中の誤った情報の劇的な増加は、ウイルスが高齢者にとって特に致命的であったことを考えると、懸念は大きくなる。
加齢とともに認知機能が低下することは多いが、一方で知識の基盤が広がり、人生経験が増え、多くの場合、より良い影響がもたらされることも事実だ。一般的に高齢者は、若年成人よりも多くのニュースに触れる傾向がある。これらの要因は、高齢者が情報処理をする上でふるいにかけ、文脈による解釈を可能にするかもしれない。
本調査は2020年の5月〜10月の間に実施され、対象者は61〜87歳の高齢者、および大学生の若年成人とした。参加者にはCOVID-19に関するニュース記事とCOVID-19とは関係のないニュース記事、それぞれ12報ずつを読んだ上で、内容の真偽を評価してもらった。なお、ニュース記事の内容は半分が真実、もう半分は偽とした。
次に、研究者らは参加者の分析的推理スキル、気質、ニュースに触れる頻度を調べた。
その結果、フェイクニュースを見極める能力は若者と高齢者では同等であることがわかった。また、この能力は双方の年齢層において、その人ごとの分析的推理スキルに関連していた。
また、若者と高齢者のいずれもが、COVID-19以外のフェイクのニュースと比較してCOVID-19のフェイクニュースを見極める能力が低いことが示された。このことは、パンデミックの開始時であったためにCOVID-19に関連する知識不足が反映された可能性がある。
ただし重要なことに、より年長の高齢者、つまり70歳以上の人は、ニュースの内容がCOVID-19に関するものか否かに関わらず、フェイクニュースを見極める能力が低下しており、その低下の程度は、分析的推理、気質、およびニュースに接する頻度に関連していた。
70歳以上のうち、気質がポジティブで、ニュースに頻繁に接する人は、細部に注意を払わないなど情報をあまり詳しく見ず、情報処理が浅くなる可能性が最も高かったという。誤った情報や偽のニュースに特に騙されやすくなるのは、人生経験と世界の知識の獲得によってしても認知能力の低下をもはや補うことができなくなった、人生の非常に遅い年齢なのかもしれない、と研究者は述べている。
出典は『実験心理学雑誌:応用』。 (論文要旨)
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