2022.4.25
, EurekAlert より:
細胞の可塑性を高めるたんぱく質ZEB1が乳がん細胞の骨転移を促進する重要な役割を担っているのかもしれない、という瑞ジュネーブ大学からの研究報告。
がん細胞は、腫瘍の原発部位から、それらの微小環境に侵入し、次に血管およびリンパ管を介して離れた健康な組織に循環して転移を形成する可能性がある。転移性乳がんの場合、がん細胞は主に骨にコロニーを形成するが、肝臓、肺、脳などの他の臓器にも見られる。
転移プロセスのさまざまな段階の原因となる分子および細胞のメカニズムはまだ完全には理解されていないが、研究によると、細胞の可塑性が重要な役割を果たしているという。これは、細胞が機能および/または形態を変化させる能力を指す。つまり、転移性になる腫瘍細胞は、その形状を変化させ、可動性になるのである。
ディディエ・ピカード教授ら研究チームは、乳がんに関連する転移過程を支配するメカニズムに関心を持っていることから、マウスにおける乳がん細胞の遊走において、細胞の可塑性を高めることが知られているたんぱく質ZEB1の潜在的な役割を調査した。
「人間の女性とは異なり、マウスに移植されたヒト乳がん細胞は、骨ではなく肺に転移します」と筆頭著者のナスタラン・モハマディ・ガハリ博士は述べている。「我々は、そこで、骨組織への転移を誘発する可能性のある因子を同定しようとし、特に因子ZEB1の影響について検討しました。」
研究チームは、in vitroにおける遊走と浸潤の実験によって、ZEB1を発現しているがん細胞が、ZEB1を発現していないがん細胞とは異なって、骨組織に移動することを発見したという。この結果は、後にヒト乳がん細胞をマウスの乳腺に移植したときにも確認された。がん細胞がZEB1を発現しなかった場合には転移は主に肺に起きた。対照的に、ZEB1が発現した場合には女性の場合と同様に、転移も骨に発生したという。
「したがって、この因子は腫瘍形成中に発現し、骨に向けた転移特性を細胞に獲得させる、と推測できます」とディディエ・ピカード教授はコメントしている。この研究は、転移過程における腫瘍細胞の可塑性の重要性を確認し、長期的には、転移の出現を防ぐための新しい治療アプローチを検討することを可能にする可能性があるということである。
出典は『ネイチャーコミュニケーション』。 (論文要旨)
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