2022.3.29
, EurekAlert より: 
睡眠の不足と、食物が自由に食べられる状況が組み合わさると、カロリー消費が増加し、それが腹部の脂肪、特に内蔵脂肪の蓄積量増加につながるという。米メイヨークリニックの研究。
睡眠不足は多くの場合、行動の選択によるもので、この選択はますます広まっている。米国の成人の3分の1以上は、交代制勤務や、本来寝ているはずの時間にスマートデバイスやSNSが使用していることなどにより、十分な睡眠をとらないことが常態化している。また、人々は起きている時間が長くなっても身体活動を増やすことなく、食べる量だけは増える傾向がある。
「私たちの調査結果は、若く健康で、比較的痩せた被験者でさえ、睡眠時間の短縮はカロリー摂取量の増加、体重のごくわずかな増加、そして腹部の脂肪蓄積の有意な増加に関連していることを示しています」と研究の主任研究者であるソマーズ博士は述べている。
「通常、脂肪は皮下に優先的に沈着します。しかし、不十分な睡眠は脂肪をより危険な『内臓区画』に転送するようです。重要なことに、睡眠の回復をするとカロリー摂取量と体重は減少しましたが、内臓脂肪は増加し続けたのです。これは、不十分な睡眠がこれまで認識されていなかった内臓脂肪沈着の引き金であり、少なくとも短期的には睡眠を十分にとっても内臓脂肪の蓄積を逆転させないことを示唆しています。長期的には、これらの所見は不十分な睡眠を肥満、心臓血管および代謝性疾患の蔓延の一因です」とソマーズ博士。
本研究の参加者は、肥満ではない12人の健康な人とし、研究施設への21日間の滞在を計2回ずつ行った。参加者は、はじめのセッションでは対照群(通常の睡眠)または睡眠制限群にランダムに割り当てられ、3か月のウォッシュアウト期間をはさんだ次のセッションでは反対の群とした。各群は研究期間中、食物を自由に選択して摂取できるようにした。
セッションの最初の4日間は順応期間とし、参加者全員が9時間眠れるようにした。次の2週間、睡眠制限群の睡眠時間は4時間までとし、対照群は9時間のままとした。その後の3日間は回復期間とし、再び全員の睡眠時間を9時間とした。
結果、睡眠制限期間中には、1日あたり300カロリー以上が余分に摂取され、順応期間と比較してたんぱく質を約13%、脂質を17%多く摂取していた。食事摂取量が最も増加したのは、睡眠制限期間の初期に最も高く、その後、回復期間中に徐々に減少して研究開始時のレベルに戻った。エネルギー消費量は研究期間全体を通してほぼ一定だった。
CTスキャンでの測定により、睡眠制限群は対照群に比べ、腹部脂肪が9%、特に内臓脂肪は11%増加していた。一方で、増加した体重はわずか約1ポンドだったため、体重の測定だけでは、睡眠不足による健康への影響という点で誤った安心感を与えてしまうおそれがあるという。また、数年にわたる内臓脂肪の進行性および累積的な増加を考えれば、潜在的な影響も懸念されるとソマーズ博士は指摘する。
また博士は、シフト労働者など、睡眠障害を簡単に回避できない人々には、運動の増加や健康的な食事の選択などの行動介入を考慮する必要があると述べている。健康な若者におけるこれらの所見が、すでに肥満であったり、メタボリックシンドロームまたは糖尿病を患っている人々など、よりリスクの高い人々とどのように関連しているかを判断するには、さらなる研究が必要とのことだ。
出典は『米国心臓学会誌』。 (論文要旨)
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