2022.3.29
, EurekAlert より:
加齢とともに遅くなるプロセスを改善することで、心臓発作や脳卒中の主な原因であるアテローム性動脈硬化症を防ぐことができるかもしれない。シャペロン介在性オートファジー(CMA)を強化することでマウスの動脈を狭窄するプラークを最小化できた、という米国アルバートアインシュタイン医科大学からの研究報告。
「この研究では、アテローム性動脈硬化症から保護するためにCMAが必要であることを示しました。アテローム性動脈硬化症は、CMAが低下すると重症になり、進行します。これは、人々が年をとったときにも起こります」とCMAの発見者で主任研究者のアナ・マリア・クエルボ教授は語っている。「しかし、同様に重要なことですが、我々は、CMA活性を増やすことで、アテローム性動脈硬化症を抑制し、その進行を止めるための効果的な戦略になり得ることを証明しました。」
CMAは、細胞に含まれる多くのたんぱく質を選択的に分解することにより、細胞が正常に機能し続けるようにしている。CMAでは、特殊な「シャペロン」たんぱく質が細胞質内のたんぱく質に結合し、それらをリソソームと呼ばれる酵素で満たされた細胞構造に導き、消化してリサイクルする。クエルボ博士は、CMAに関与する分子プレーヤーの多くを解読し、CMAが重要なたんぱく質のタイムリーな分解を通じて、グルコースと脂質の代謝、概日リズム、DNA修復などの多数の細胞内プロセスを調節することを示した。博士はまた、CMAが壊れると、損傷したたんぱく質が毒性レベルまで蓄積して加齢に寄与すること、神経細胞に毒性物質が蓄積すると、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病などの神経変性疾患に寄与することを発見した。
心血管疾患(CVD)は、世界の主要な死因である。CVDは通常、アテローム性動脈硬化症と関連しているが、これは動脈壁内のプラークの蓄積である。プラークが蓄積すると、動脈が硬化して狭くなり、酸素化された血液が心筋や脳などに送られるのが妨げられる。
アテローム性動脈硬化症におけるCMAの役割を調査するために、クエルボ博士らは、マウスに脂肪の多い西洋型食餌を12週間与えてアテローム性動脈硬化症を促進し、プラークに冒された大動脈のCMA活性を監視した。CMA活性は最初食事によって増加したが、12週間後、プラークの蓄積が顕著になると、動脈硬化で機能不全に陥ることが知られている2種類の細胞(マクロファージと平滑筋細胞)ではまったく検出されなくなった。
「CMAは、マクロファージと平滑筋細胞を保護する上で非常に重要であるように見えました。アテローム性動脈硬化症を促進する食事にもかかわらず、少なくともしばらくの間、CMA活性が基本的に停止するまで、それらが正常に機能するのを助けました」とクエルボ博士は語っている。博士は、CMA活性がまったくないマウスに高脂肪食を与えると、CMAの重要性のさらに強力な証拠が得られたと述べた。そこではプラークは、同様に高脂肪食を与えた対照動物よりも40%近く大きくなった。
研究チームはまた、弱いCMA活性がヒトのアテローム性動脈硬化症とも相関しているという証拠を発見したという。脳卒中を起こした一部の患者は、頸動脈内膜剥離術と呼ばれる外科的処置を受け、頸動脈のプラークの影響を受けた部分を切除して、2回目の脳卒中のリスクを軽減する。クエルボ博士らは、初めての脳卒中患者62人からの頸動脈セグメントのCMA活性を分析し、患者は手術後3年間追跡された。
「初めての脳卒中後にCMAの活性が高い患者は、2回目の脳卒中を発症することはありませんでしたが、2回目の脳卒中はCMA活性が低いほぼすべての患者で発生しました」とクエルボ博士は語っている。「これは、動脈内膜切除後のCMA活性レベルが、特にCMAが低い人々にとって、2回目の脳卒中のリスクを予測し治療を導くのに役立つ可能性があることを示唆しています。」
本研究はまた、CMA活性を上げることが、アテローム性動脈硬化症が重症化または進行するのを防ぐ効果的な方法である可能性があることを示した最初の研究であるという。研究チームは、CMAを遺伝的に「アップレギュレーション」したマウスに高脂肪の西洋型食餌を与え、同じ食餌を12週間与えられた対照マウスと比較した。CMA活性が高まったマウスは、血中脂質プロファイルが大幅に改善され、対照マウスと比較してコレステロール値が著しく低下した。この遺伝子改変マウスで形成されたプラーク病変は、対照マウスのプラークと比較して、重症度が有意に小さく、軽度だったという。
博士らによれば、幸いなことに、人々はこの発見から利益を得るために遺伝子改変を必要としないという。
「私たちは、ほとんどのマウス組織とヒト由来細胞でCMA活性を安全かつ効果的に増加させる可能性を示した薬剤化合物を開発しました」とクエルボ博士は語っている。
出典は『国立科学アカデミー論文集』。
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