2022.3.15
, EurekAlert より:
寿命には代謝速度よりも体温のほうが重要であるかもしれない、という中国・聊城大学からのげっ歯類を用いた動物実験の報告。
代謝が速い動物は、代謝が遅い動物よりも早く死ぬ傾向がみられる。
けれども、特定の種内では、代謝と寿命の関係はそれほど明確でない。一般に、寿命を延ばすカロリー制限などは代謝速度を遅くするので、「速く短く生きる(Live fast, die young)という考え方に一致する。とはいえ、運動は代謝を高めるが、平均的にみて、それは寿命を延ばすようにみえる。
寿命に及ぼす代謝の影響に関しては、代謝がしばしば体温を変化させるという問題がある。一般的に、代謝速度が遅いことは低体温に関連している。したがって、カロリー制限をしたマウスの寿命が延びるとき、寿命の延長が代謝速度の低下と低体温のどちらに関連しているのかどうかは明らかではない。
本研究において、研究チームは普通ではない状況を作り出した。つまり代謝速度と体温を逆の方向に動かして、どちらが重要であるかを明らかにしようというのである。
マウスやハムスターが高温にさらされると、体温が上昇する一方で代謝が低下する。「げっ歯類をこれらの条件にさらすと寿命が短くなることがわかりました。代謝が低くても寿命は長くなりませんでしたが、温度が高くなると寿命が短くなりました」と共著者のジョン・スピークマン教授は述べている。
研究チームは、小さなファンを使用して、高温にさらされたマウスとハムスターに空気を吹き付けた。これは彼らの代謝に影響を与えなかったが、高い体温を持つことを防いだ。この状況は、周囲温度が高いことによる寿命への影響を逆転させたという。
これらの結果に基づくと、体温は代謝速度よりもはるかに重要な寿命のメディエーターであるように思われる、と研究チームは言う。「したがって、私たちは「速く短く生きる」というのではなく「冷たく長生きする(Live cold, die old)」という言い回しに変えるべきかもしれない。」
「私たちは、高温にさらされた2種の小さなげっ歯類において、代謝速度から体温の寿命に対する影響を分離しました。私たちは、この発見に興奮しています。特に動物に小さなファンで空気を送ることで、代謝速度を変えずに体温を下げ、高温の寿命に対する影響を逆転できたことです」と筆頭著者の趙志軍博士はコメントしている。
出典は『ネイチャー代謝』。 (論文要旨)
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