2022.3.10
, EurekAlert より:
カカオの長期的な摂取は、男性アスリートの運動関連の消化器問題を改善するようには見えず、腸内細菌叢に最小限の変化しか引き起こさないようだ、というスペインのエウロペア・デ・マドリード大学からの研究報告。
激しい運動を行うと消化器系の不調を引き起こすアスリートがいる。吐き気、胸焼け、腹部けいれん、下痢などの症状を起こし、最悪の場合にはアスリートは競技を中断せざるを得なくなる。
先行研究で、フラボノイドが豊富なカカオの長期間摂取によってこの問題を軽減できる可能性が示唆されていた。フラボノイドの抗酸化作用と抗炎症作用によるものとされ、動物実験では腸内細菌叢にプレバイオティック効果のあることも示されていた。
けれども、ヒトの長期的なカカオの摂取が運動関連の消化器問題を軽減できるかどうかは、標準的な方法で検証されていなかったという。そこで今回研究チームは、厳密な臨床試験を実施した。
研究チームは、54名の高いフィットネスレベルをもつ男性アスリートを対象にランダム化プラセボ対照臨床試験を実施した。参加者は、10週間にわたって厳密なトレーニングを継続した、その間参加者は、通常の食事に加えてセミスキムミルクと混合された、フラボノイドが豊富なカカオまたはプラセボでんぷん粉末のいずれかを毎日朝食時に飲んだ。トレーニング期間の開始時と終了時に、アスリートは長距離走テストを受けた。
その結果、参加者の消化器症状は、どちらの群でも変化が見られなかったという。これは、カカオが運動による消化器系の不調を改善しなかったことを示している。さらにチームは、カカオが参加者の腸内細菌叢と血漿および糞便代謝物の組成にわずかな影響しか及ぼさないことを発見した。研究チームは、アスリートの食事には豊富な果物と野菜が含まれていたので、カカオの小さな効果はマスクされてしまった可能性があるが、カカオは消化器問題を抑制するための効果的な運動サプリメントではないだろう、と結論付けている。
出典は『農芸・食品化学雑誌』。 (論文要旨)
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