2022.2.28
, EurekAlert より:
インフルエンザまたはCOVID-19ワクチンの接種直後に軽度〜中程度の強度の運動を90分間行うと、運動しなかった人に比べて免疫が増強する可能性が発見された。運動による副作用の増加はみられなかったという。米アイオワ州立大学の研究。
この研究では、ワクチン接種から30分以内にエアロバイクや速歩などの軽度〜中程度の運動を開始した参加者と、運動しなかった参加者と比較した。なお、ワクチンは新型インフルエンザ、季節性インフルエンザ、COVID-19の3種で、それぞれ別の参加者に接種した。運動時間は、季節性インフルエンザワクチン接種群は45分または90分のいずれか、新型インフルエンザおよびCOVID-19ワクチン接種群は90分とした。
結果、4週間後の抗体量はいずれのワクチンを摂取した場合でも、運動しなかった人に比べて90分間運動をした人の方がより多くなっていた。しかし、運動時間が45分間だった人では差がみられなかった。また、マウスを用いた実験でも同様の結果が得られたという。
「私たちの予備的な研究結果は、特定の時間がファイザー・バイオンテック社製COVID-19ワクチンとインフルエンザの2つのワクチンに対して抗体反応を高められることを初めて示しました」と、責任著者のコフート教授は述べている。
研究グループは、この研究の結果は、さまざまなフィットネスレベルの人々に直接利益をもたらす可能性があるとしている。実験の参加者の約半数は、過体重または肥満であったが、90分間の運動時にはウォーキングやサイクリング等の距離ではなく、心拍数を1分あたり約120〜140回のペースを維持することに重点を置いたという。
なお今後、運動時間を60分程度とした場合に抗体増加がみられるのかを調査したいとしている。
<免疫増強の理由はなにか?>
比較的長時間の、軽度〜中程度の強度の運動が体の免疫応答を改善する理由について、コフート教授は複数の可能性を挙げている。運動は血液とリンパの巡りを良くし、免疫細胞の循環を助ける。免疫細胞は体内を移動するため、異物を検出する可能性が高くなるというわけだ。
マウス実験からのデータはまた、運動中に生成されるたんぱく質のタイプ(すなわち、インターフェロンα)がウイルス特異的抗体およびT細胞の生成に役立つことを示唆している。
「しかし、その理由と方法に答えるには、さらに多くの研究が必要です。私たちが運動すると、代謝、生化学的、神経内分泌、循環など、非常に多くの変化が起こります。したがって、おそらく私たちの研究で見つかった抗体応答に寄与する要因が組み合わさっているのではないでしょうか」とコフート教授は述べている。
研究グループは、ワクチン接種後6か月の参加者の抗体反応を追跡しており、追加接種を受けた人々に対する運動の影響に焦点を当てた新たな研究を開始したとのことだ。
出典は『脳、行動、そして免疫』。 (論文要旨)
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