2022.2.18
, EurekAlert より:
WHOは、2030年以降、毎年100万人以上が 肝臓がんで亡くなると予測している。米国コールドスプリングハーバーラボラトリー(CSHL)の研究チームは、このがんの成長と拡大を可能にするエネルギー経路を妨害する方法を考え出したという。
研究チームは、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を使用した。これは 、RNAに結合し細胞がたんぱく質を構築する方法を変える合成遺伝暗号分子である。
この分子は、肝臓がん細胞が使用する酵素を、通常は胚細胞およびがん細胞で発現されるあるタイプのピルビン酸キナーゼたんぱく質(PKM2)から、腫瘍抑制作用を増強する別の形態のピルビン酸キナーゼたんぱく質(PKM1)に切り替える。このたんぱく質の機能を変えると、がん細胞が栄養素を使用する方法に影響を及ぼし、その成長を制限する可能性があるのだという。
「私たちのアプローチのユニークな点は、PKM2を減らし、PKM1を増やすという2つのことを同時に行っていることです。そして、それらの両方が重要であると私たちは考えています」と主任研究者のエイドリアン・クライナー教授は述べている。
ASOは、皮膚の下に注射した後、体が直接肝臓に送るため、このタイプのがんの治療に有望だという。肝臓がんが、成長して他の臓器に広がるのを防ぐことが期待できる。研究チームは、研究した2つのマウスモデルで腫瘍の発生が大幅に減少したことを確認した。この研究は、膠芽腫と呼ばれる攻撃的なタイプの脳腫瘍からの培養細胞でPKM2をPKM1に切り替えたクライナー教授の研究室での以前の研究に基づいている。
健康な肝細胞は、ASOが肝がん細胞で標的とするのと同じRNAを生成しないため、ターゲット外の影響が発生する可能性が低くなるという、別の利点もあるという。
「正常な肝細胞に影響を与えることなく、この治療法を肝臓に直接提供できることで、将来、肝臓がんを治療するためのより効果的で安全な選択肢を提供できる可能性があります」と共同研究者のディロン・ヴォス博士は述べている。
嚢胞性線維症や脊髄性筋萎縮症などの他の疾患でアンチセンスオリゴヌクレオチドを使用しているクライナー教授は、 これらの治療ツールを引き続き使用して、肝臓がんの治療法を模索する予定であるとのことである。
出典は『がん研究』。 (論文要旨)
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