2022.1.24
, EurekAlert より:
がんや筋ジストロフィーなどの疾患、高齢者における筋肉変性などの治療法に貢献する可能性のある発見がなされた。カナダ・オタワ大学などの研究。
骨格筋の重要な構造たんぱく質の発現を維持する上で、酵素の一種・GCN5が重要であることが示された。骨格筋とは、呼吸、姿勢、運動のすべての拠り所となる、骨に付着した筋肉だ。
「筋肉においてGCN5を発現できなくすると、極端な身体的ストレスに対処できなくなることがわかりました」と、本研究の上級著者であるメンジーズ准教授は述べている。
約5年間に渡り研究グループは、代謝や炎症などの複数の細胞プロセスを調節する酵素であるGCN5が筋線維で果たす役割を調べるため、遺伝子操作によりGCN5を無効化した筋肉をもつマウス(GCN5ノックアウト・マウス)を用いて丹念に実験を行ってきた。
その結果、下り坂トレッドミル走行などの身体的ストレス下での筋肉の健康の顕著な低下がみられた。GCN5ノックアウト・マウスの筋線維は、下り坂トレッドミルを走ることに伴って劇的に弱くなり高齢マウスのような状態になったが、通常のマウスにはこのような変化はみられなかったという。
メンジーズ准教授によるとこの所見は、進行した老化、または筋原性疾患や筋ジストロフィーで観察されるものに類似しているとのことだ。また、研究を進めるとGCN5が主要な筋肉の構造たんぱく質、特にジストロフィンの発現を促進しており、不足するとこのたんぱく質が減少することがわかりました。
ジストロフィンは筋細胞の膜を維持するための最も重要なたんぱく質であり、筋細胞の一種の支え、そして衝撃吸収装置として機能するため重要だ。これがなければ、筋肉は物理的ストレスに非常に敏感になり、筋肉の衰弱は、大打撃となり致命的な結果になりかねない。
メンジーズ准教授は、この研究が将来の治療法開発の基盤構築に役立つ可能性があることを示唆している。「したがって、これらの発見は、がん、筋原性疾患、筋ジストロフィー、または加齢時にも健康な筋肉を維持するために、GCN5活性またはその下流の標的を調節する新しい治療法の発見に役立つ可能性があります」としている。
出典は『細胞生物学雑誌』。 (論文要旨)
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