2021.12.28
, EurekAlert より:
免疫療法を受けている悪性黒色腫患者は、食物繊維の豊富な食事によって、治療への反応が良くなる可能性がある、という米国テキサス大学などからの研究報告。
本研究は、最も致命的な皮膚がんである黒色腫を含む複数の種類のがんとの闘いにおける有望な進展であると研究者らは述べている。
免疫チェックポイント阻害剤(immune checkpoint blockade、ICB)と呼ばれる治療技術は、黒色腫の治療や一般的ながんの治療に革命をもたらした。ICB治療は、ある種の免疫系細胞(たとえばT細胞)によって生産され、またいくつかのがん細胞が生産する、チェックポイントと呼ばれるたんぱく質をブロックする阻害薬を用いる治療法である。チェックポイントは免疫反応が強くなりすぎるのを防ぐのを助けるが、時にはT細胞ががん細胞を殺すことも妨げてしまう。したがってチェックポイントを阻害すると、T細胞はがん細胞の殺傷をより良く行うことが可能になる。
「ICBは、がん治療のゲームチェンジャーであり、多くの研究で腸内細菌に影響されることが、動物モデルやコホート研究で示されている」と共同研究者でオレゴン州立大学のアンドレイ・モルガンは言う。「患者の腸内細菌叢は食事や医薬品などを含む広範囲の環境因子によって形成され、遺伝的因子の関与はどちらかといえば少ない。」
研究チームは、数百人の黒色腫患者を調べ、腸内微生物叢、食生活、プロバイオティクスの使用、病気の特徴、治療結果を分析した。ほとんどの患者は、抗プログラム細胞死たんぱく質療法(anti-PD-1)と呼ばれるタイプのICBによって治療を受けていた。
このコホート研究では、食物繊維をより多く摂取することはICB患者の疾患が進行しないことと関連していたという。もっとも効果が見られたのはきわめて多くの食物繊維を摂取しプロバイオティクスを使用していない患者だった。
マウスを用いた動物モデル研究も並行して実施され、同様の結果を得たという。
「我々は、食物繊維とプロバイオティクスという腸内細菌に影響をおよぼすと知られるものが、ICBに対して異なるアウトカムと関連することを示した」とモルガンは述べている。「ヒトのコホートの結果から我々は因果関係を言えない。我々が測定していない別の因子が関与している可能性もあるからだ。」
けれども、とモルガンは言う。「マウスの結果は抗腫瘍免疫は、高食物繊維でプロバイオティクスなしのときに最も強い、というアイデアを支持するものだった。」
二重盲検のランダム化された食事介入研究は、ICB療法の開始時の食事変更が患者のアウトカムを改善できるかどうかを確立するために重要であるとモルガンは述べている。
「そして、調査結果は、いくつかの市販のプロバイオティクスがICB患者に有害である可能性があることを示唆しているが、実際には有益なプロバイオティクスがあるかどうかを明らかにするためには、より多くの研究が必要だ」とモルガンは述べている。
出典は『サイエンス』。 (論文要旨)
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