2021.12.15
, EurekAlert より:
大気汚染の多い地域でジョギングや競技スポーツなどの激しい身体活動を行う人々は、脳疾患の特定のマーカーに関して、その運動による利益が少ない可能性があるようだ、という米国アリゾナ大学からの研究報告。
この研究で調べたマーカーには、脳の白質への損傷を示す大脳白質病変と灰白質体積が含まれていた。より大きな灰白質体積とより小さな白質病変は、全体的に優れた脳の健康のマーカーである。
「激しい運動は大気汚染への曝露を増加させる可能性があり、以前の研究では、脳に対する大気汚染の悪影響が示されている」と筆頭著者のメリッサ・ファーロング博士は述べている。
本調査では、大規模な生物医学データベースである英国バイオバンクの平均年齢56歳の8,600人を対象にした。空気中に浮遊する液体または固体の粒子である二酸化窒素や粒子状物質を含む汚染への人々の曝露は、Land Use Regression(LUR)モデルによって推定された。LURは、大気モニターと、交通、農業、産業の大気汚染源などの土地利用特性に基づいて、大気汚染レベルをモデル化する。
参加者は大気汚染曝露によって、最低の大気汚染から最高の大気汚染まで、4等分された。
各人の身体活動は、加速度計と呼ばれる動き検出装置を使用して1週間測定された。研究チームは、どれだけ活発な身体活動を行ったかを、週あたり、何もしないから30分以上の範囲で分類した。
解析の結果、最大量の活発な身体活動を行った人々は、800cm3灰白質体積を持ち、まったく活発な身体活動をしなかった人々の790cm3と比べて変化がなかった。
けれども、白質病変については、大気汚染への曝露が激しい身体活動の影響を変えることを発見したという。研究チームは、年齢、性別、その他の共変量を調整した後、激しい身体活動が大気汚染の少ない地域で白質病変を減少させることを発見したが、これらの利点は大気汚染の多い地域では見られなかった。
「さらなる研究が必要だが、再現性がとれれば、公共政策によって、人々が運動中に大気汚染への曝露を避けるようになるかもしれない。例えば、大気汚染の多くは交通に由来するのでランニングや自転車のための専用道を交通量の少ない場所に設置することは有益だろう」とファーロング博士はコメントしている。
出典は『神経学』。 (論文要旨)
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