2021.12.13
, EurekAlert より:
様々な薬による腸内細菌への影響を調査したところ、想像以上に顕著な影響があることがわかったという。抗生物質などは悪影響を与えるものの、アスピリンなどの薬は良い影響を及ぼしているようだとのことだ。独・欧州分子生物学研究所などの研究。
腸内細菌叢は、体の正常な機能に不可欠な数十億の微生物で構成されている。
本研究では、一般的に使われる28種類の薬や、それらの組み合わせの効果について、2千人以上を対象に分析している。研究者で欧州分子生物学研究所のディレクター、ボルク氏は「多くの薬は腸内細菌の組成と状態に悪影響を及ぼしますが、アスピリンなど、腸内細菌叢へのプラスの影響を与える薬もあります。薬は、病気や食事、喫煙を組み合わせたものよりも、宿主のマイクロバイオームに対してより顕著な影響を与える可能性があることがわかりました」などと述べている。
抗生物質が腸内細菌に及ぼすネガティブで持続的な影響はすでによく知られているが、この研究では、そのような影響が時間の経過とともに蓄積する可能性が高いことが示された。「5年間にわたって抗生物質を複数服用している患者の腸内細菌叢は、健康状態が悪化していることがわかりました。これには、抗菌薬への耐性を示す兆候が含まれています」と、研究の共同筆頭著者であるフォルスルンド氏。
「マイクロバイオームは患者の健康状態を反映し、疾患の重症度を評価するためのさまざまなバイオマーカーを提供できることを私たちは知っています。しかし、見過ごされがちなのは、病気の治療に使用される薬がマイクロバイオームの状態にも影響を与えることです」と、研究の筆頭著者の1人であり、ライプツィヒ大学医療センターのチャカマウン医師は付け加えている。
複数の交絡因子の影響を説明する統計的アプローチを開発することにより、研究グループは薬と病気の影響を分けて解くことができたという。
研究者たちは、これらの結果が、既存薬の再開発や個人別の治療、および予防戦略の計画に役立つ可能性のある知識を提供できることを期待しているという。
出典は『ネイチャー』。 (論文要旨)
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