2021.12.8
, EurekAlert より:
骨の代謝などに不可欠なことで知られるビタミンDだが、心臓の健康とも関連することが示唆された。欠乏状態の人は、そうでない人に比べて心臓病リスクが2倍以上だったという。南オーストラリア大学の研究。
この研究でビタミンD欠乏症の人は、正常レベルの人に比べて、心臓病や血圧の上昇を患う可能性が高いことを示している。濃度が最も低いグループに属する場合、心臓病のリスクは、十分な濃度の参加者に見られるリスクの2倍以上にのぼったという。
世界的にみて、心血管疾患(CVD)は主要な死因であり、年間推定1,790万人の命を奪っている。豪州においては、死亡原因の1/4を占めているほか、1年あたりの関連医療費は50億ドルにのぼっており、これはあらゆる病気の中でも最も多額である。
ビタミンDの欠乏状態は世界の多くの地域で一般的であり、英国バイオバンクのデータでは55%の人が低レベル(50 nmol/L未満)で、13%が重度の欠乏症(25 nmol/L未満)である。他国をみると、ビタミンDが低レベルの人は豪州で23%、米国で24%、カナダでは37%と推計される。
南オーストラリア大学のハイポネン教授は、心臓の健康に対するビタミンD欠乏症の役割を理解することで、心血管疾患の世界的な負担を軽減できると述べている。
「重度の欠乏症は比較的まれですが、これが発生する状況下では、積極的に行動し、心臓への悪影響を回避することが非常に重要です。たとえば、日光への曝露が限られている可能性のある高齢者施設の人々にとって、欠乏は問題になる可能性があります。脂の多い魚、卵、栄養強化食品や飲み物などの食品からもビタミンDを摂取できます」としながらも教授は、欧米では健康的とされる食事でも、十分な量のビタミンDを摂取することは難しいと述べ、皮膚でビタミンDを生成するため太陽光を浴びることが難しい場合はサプリメントからの習慣的摂取が必要だとしている。
「この致命的な状態が世界的に蔓延していることを考えると、低レベルのビタミンDと心血管疾患の関係を理解することは特に重要です」。
この研究では、約27万人を対象に新しい遺伝的アプローチを用い、参加者の血中ビタミンDレベルの高さが心血管疾患リスクにどのように影響するかについて、強力な統計的証拠を提供できるようにした。
「ビタミンD欠乏症の人をランダム化比較試験に採用し、長期間治療せずに放置することは倫理的ではありません。参加者を害にさらすことなく、ビタミンDレベルの改善が最も必要としている人々のリスクにどのように影響するかを示すことができるので、まさにこのタイプの難しい設定が私たちの遺伝的アプローチの力を示しています」などとハイポネン教授は話している。
出典は『欧州心臓雑誌』。 (論文要旨)
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