2021.12.6
, EurekAlert より:
食物の摂取量が増えると腸が長くなるうえ、絨毛などが増大することで、よりカロリー吸収能力が高まることが明らかに。肥満の原因の基本的メカニズムに光が当てられた。スイス・ジュネーブ大学の研究。
「数年前、環境的な引き金や生理学的な必要性に応じて腸が長くなったり短くなったりする可能性があることを発見しました」と、本研究の責任著者であるトライコフスキー教授は振り返る。「したがって、この驚くべき腸の可塑性を促すものを理解したかったのです」。
人間の腸の生検(3D人工構造)と組み合わせたさまざまなマウスモデルを使用して、研究チームは、摂取された食物の量が腸の長さの主な調節因子であることを観察した。「摂取した食物の量を増やすことに対して、比較的速く、生理学的に印象的な反応が見られました。腸の長さが30%以上増加し、絨毛と微絨毛が大幅に増大しており、腸のカロリー吸収能力の向上に貢献しているのです」とトライコフスキー教授は付け加えている。重要なことに、これらの変化は可逆的だった。食物の量を減らすと、腸の長さと形態が正常に近づいたという。
腸の拡張には多くのエネルギーが必要だ。研究チームは、腸の吸収面を増やすと、腸内のさまざまな代謝経路を動員することを発見した。
彼らは腸の拡張に寄与する可能性のあるいくつかの潜在的な経路を発見したが、そのうち1つはPPARα経路が不可欠であることが判明した。実際、PPARαは絨毛の長さを伸長するだけでなく、別のたんぱく質であるPLIN2のレベルを上げることで食物からのカロリー吸収能力を高めるために非常に重要であると思われる。PLIN2により腸の細胞内の脂肪滴の形成が促進されることで、脂肪の吸収を促進する。
マウスの腸内でPPARαを不活性化する実験で、このメカニズムを確認することができたという。「腸のPPARαの欠失、またはその薬理学的阻害、腸の吸収機能を低下させるのに顕著な効果を示しました。腸特異的なPPARα阻害は、脂肪の蓄積と肥満、および高カロリーの摂食によって引き起こされる耐糖能異常を元に戻すのに十分でした」とトライコフスキー教授。
このような腸の可塑性のメカニズムを利用することで、肥満やその合併症への対策として現在行われている胃バイパス手術の代替手段になりうることが期待される。
出典は『ネイチャーコミュニケーション』。 (論文要旨)
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