2021.11.17
, EurekAlert より:
肥満によって引き起こされる慢性炎症は、歯を固定する骨などの骨組織を破壊する細胞の発達を引き起こす可能性があるという。米・ニューヨーク州立大学の動物実験から。肥満と歯周病が関連する理由の手掛かりになりそうだという。
この研究では、 肥満に起因する過度の炎症により、骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)の数が増加することがわかったという。MDSCは、病気の際に増加して免疫機能を調節する免疫細胞の一種だ。骨髄に由来するMDSCは、破骨細胞(骨組織を破壊する細胞)を含むさまざまな種類の細胞の元となる。
骨量減少は歯周病の主要な症状であり、最終的には歯の喪失につながる可能性がある。歯周病としても知られている歯肉疾患は、米国疾病予防管理センターによると、30歳以上の成人の47%以上が罹患するとされる。
「肥満の程度と歯周病の間には明確な関係がありますが、それを実証するメカニズムは完全には理解されていませんでした」と、論文の責任著者であるカークウッド教授は述べている。
「この研究は、肥満時のMDSCの拡張が歯周炎時に破骨細胞になるという概念を促進し、歯槽骨(歯の根を支える骨)破壊の増大に結びつけています。まとめると、このデータは、肥満が歯槽骨喪失のリスクを高めるという見解を裏付けています」と、筆頭著者のクワック博士。
この研究では、2群に分けたマウスに、16週間にわたってそれぞれ別の餌を与えた。一方の群は脂肪エネルギー比率が10%の低脂肪食、もう一方は脂肪エネルギー比率が45%に上る高脂肪食だった。
すると、高脂肪食群は、低脂肪食群と比較して、肥満、より多くの炎症、および骨髄と脾臓においてMDSCがより増大していた。高脂肪食群ではまた、かなり多くの破骨細胞が発達し、より多くの歯槽骨を喪失したという。
また、破骨細胞形成に関連する27の遺伝子の発現は、高脂肪食群で有意に増大していた。
この調査結果は、関節炎や骨粗鬆症など、肥満に伴って発症する他の慢性炎症性骨関連疾患の背後にあるメカニズムにさらに光を当てる可能性がある、とカークウッド教授は述べている。
出典は『歯学研究雑誌』。 (論文要旨)
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