2021.11.16
, EurekAlert より:
DHAを添加した栄養補助食品が、重度の栄養不良の子供たちの認知を大幅に改善することができるかもしれない、という米国セントルイス・ワシントン大学からの研究報告。
研究チームは、ドコサヘキサエン酸(DHA)として知られるオメガ3脂肪酸を、国際的に販売されているピーナッツバターに似た栄養豊富な「すぐに食べられる保健用食品」(ready-to-use therapeutic food、RUTF)に加えると、子供の全体的な認知力が向上することを発見した。DHA強化食品を食べた子供たちは、 脳の健康に関連する、粗大および微細運動能力、言語能力、社会的スキルが、食べなかった子供たちを上回ったという。
本臨床試験は、2017年10月から2020年12月まで、アフリカ・マラウイの農村部にある28の診療所で実施された。合併症のない重度の栄養不良の6か月児から5歳児の2,565人を対象とした。
子供たちは、RUTFの3つのうちの1つを受け取るようにランダムに割り当てられた。すなわち(1)豊富なオメガ6を含む標準バージョン、(2)オメガ6の量を減らしオレイン酸をを増やしたバージョン、(3)オメガ6を減らしオレイン酸とDHAを含むバージョンであった。データを分析する治験責任医師、家族、研究者は、子供がどのグループに割り当てられているかを知らなかった。
介入は約8週間継続され、終了6か月後、研究チームは、マラウイ開発評価ツールを使用して子供たちの認知機能を比較した。
その結果、DHAを含むRUTFを受け取った子供は、他の2群に比べて、認知機能が良好であることが明らかになった。標準バージョンに比べて、DHAを含むバージョンを摂取した子供は、平均22%成績が向上した。
このすぐに食べられる栄養補助食品を提供する外来患者の食事プログラムは、数十万人の栄養失調の子供たちの命を救ってきた。以前のデータは、食物で治療された重度の急性栄養失調の子供たちが85%から90%の割合で回復したことを示している。けれども、栄養不良の子供たちの世話をする研究チームの人々は、話すのが難しい、運動の問題、行動の問題など、重度の栄養不良に関連する認知の問題を効果的に治療するという課題に直面していたという。
研究者によれば、栄養不良の脳は、正常な機能を回復するために追加の特別な栄養素、すなわち魚や母乳に最も一般的に見られるオメガ-3多価不飽和脂肪酸を必要としている。DHAは脳の物質の10%を構成し、脳にとって最も重要な栄養素である。
「オメガ3と拮抗するオメガ6を減らすとともに、オメガ3を治療食に加えることで、飢えている子供たちの認知力が高まった」と筆頭著者で医師のマーク・マナリー教授はコメントしている。
出典は『米国臨床栄養学雑誌』。 (論文要旨)
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