2021.10.21
, EurekAlert より:
寝る前に温かい牛乳を飲むとぐっすりと眠れるなどと言われるが、牛乳に含まれる特定のペプチドがストレスを和らげ、深い睡眠へ導くことがわかった。中国・華南理工大学の動物実験から。
これまでにも、牛乳に含まれるアミノ酸・トリプトファンが良質な睡眠のための一助となるとされてきた。今回、新たに「カゼイン・トリプシン加水分解物(CTH)」と呼ばれる牛乳ペプチドの混合物が見出された。
米国疾病予防管理センター(CDC)によると、米国の成人の3分の1は十分な睡眠を取れていないという。睡眠障害に処方される一般的な睡眠導入剤、ベンゾジアゼピンやゾルピデムなどには副作用や依存性の懸念がある。多くの睡眠導入剤は、脳の興奮を抑制する脳内のたんぱく質・GABA受容体を活性化することで催眠作用を持つ。
研究チームは、GABA受容体に結合して抗不安・安眠のはたらきを持つ複数の天然ペプチドを発見した。たとえば、カゼインと呼ばれる牛乳のたんぱく質を消化酵素・トリプシンで処理すると、CTHとよばれる睡眠促進ペプチドの混合物が生成される。この中に含まれるα-カソゼピン(α-CZP)というペプチドには、睡眠促進作用のいくつかに関与する可能性があるとされている。そこで今回、CTHの中により強力な作用をもつ他の物質が含まれているかを確かめるための実験を行なった。
まず、マウスの睡眠実験でCTHとα-CZPの効果を比較し、CTHがα-CZP単独よりも優れた睡眠増強特性を示すことを発見した。この結果から、α-CZP以外の睡眠促進ペプチドがCTHに存在することが示唆された。次に、チームは質量分析法により、シミュレートされた胃消化中にCTHから放出された生物活性ペプチドを特定し、GABA受容体への結合と血液脳関門を通過する能力について、これらのペプチドを仮想的にスクリーニングした。
これにより最も強力な作用を持つものとして候補に挙がった「YPVEPF」と呼ばれる物質をマウスに与えたところ、対照群と比較して、すぐに眠りにつくマウスの数を約25%、睡眠時間を400%以上増加させたという。CTH中には、他にも睡眠強化を期待できるペプチドがあるかもしれないとのことだ。
出典は『農芸・食品化学雑誌』。 (論文要旨)
|