2021.10.19
, EurekAlert より:
中年成人の10年以内に起きる冠状動脈疾患の11%は、鉄欠乏を予防すれば回避できるかもしれない、という独ハンブルク大学からの研究報告。
「これは観察研究であり、鉄欠乏が心臓病を引き起こすと結論付けることはできない」と筆頭著者のベネディクト・シュラーゲ博士は述べている。「けれども、関連性があるという証拠が増えており、これらの調査結果は、結果を確認するためのさらなる研究の基礎を提供するものだ。」
本研究には、欧州の3つの人口ベースのコホートからの12,164人の参加者が含まれた。年齢は45-68歳(平均59歳)、55%が女性だった。
参加者は、2つの定義に従って鉄欠乏または非欠乏に分類された。1)貯蔵鉄(フェリチン)のみを指標とする絶対的鉄欠乏。2)貯蔵鉄(フェリチン)と血清鉄(トランスフェリン)を含む機能的鉄欠乏。
シュラーゲ博士は次のように説明している。「絶対的鉄欠乏は鉄の状態を評価する伝統的な方法だが、血中を循環する鉄を見逃している。機能的鉄欠乏は、両方の測定値を含み、十分な貯蔵量があるが、体が適切に機能するのに十分な血中濃度がないものをピックアップするため、より正確である。」
研究開始時には、参加者の60%が絶対的鉄欠乏であり、64%が機能的鉄欠乏だった。平均13.3年の追跡期間中に、2,212人(18.2%)が死亡した。うち、573人は心血管系疾患が原因だった。1,033人が冠動脈疾患、766人が脳卒中と診断された。
データ解析の結果、機能性鉄欠乏の者は、機能性鉄欠乏がない者と比較して、冠動脈疾患の発症リスクが24%高く、心血管系の死亡のリスクが26%高く、全死因による死亡リスクが12%高かった。絶対的鉄欠乏は、絶対的鉄欠乏がない場合と比較して、冠動脈疾患の発症リスクが20%上昇することに関連していたが、死亡率とは関連していなかった。
年齢、性別、喫煙、コレステロール、血圧、糖尿病、BMI、および炎症について調整した結果、10年以内に、全死亡の5.4%、心血管系死亡の11.7%、および新たな冠動脈疾患の診断の10.7%が機能的鉄欠乏に起因することが明らかになったという。
「この分析は、ベースラインで鉄欠乏がなかった場合、全死亡の約5%、心血管系死亡の12%、および新しい冠動脈疾患の診断の11%が次の10年で発生しなかったことを示唆している」とシュラーゲ博士はコメントしている。
出典は『ESC心不全』。 (論文要旨)
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