2021.10.1
, EurekAlert より:
間欠断食が加齢を遅らせる細胞内作用機序の解明によって(少なくともショウジョウバエで)空腹感なしに断食の健康上の利点を得る潜在的な方法が示された、という米国コロンビア大学からの研究報告。
間欠断食や時間制限ダイエットは、1日の中で摂食時間を制限するが、総摂取カロリーは制限しないのが普通である(対照的に、通常のダイエットは、それもまた寿命を延ばすことが示唆されているが、総摂取カロリーを制限する)。
「間欠断食は食事のタイミングを制限するので、自然の生物学時計が重要な役割をはたしているのではないか、という仮説を立てた」と主任研究者のミミ・シラス=ハイザ准教授は語っている。
研究チームは、調査のためにショウジョウバエに目を向けた。ショウジョウバエはヒトと同様の体内時計を持っており、日中は活動を続け、夜は眠りながら、ヒトの病気に関連する遺伝子の約70%を共有している。ショウジョウバエとヒトは同じように加齢するので、加齢の優れたモデルとなるが、2か月しか生きないので、加齢実験がより技術的に実行し易くなる。
実験では、ハエを4つの異なるスケジュールの1つに置いた。(1)24時間の無制限の食物へのアクセス、(2)12時間の日中の食物へのアクセス、(3)24時間の断食とそれに続く24時間の無制限の摂食、そして(4)研究チームが間欠的時間制限断食(iTRF)と呼んだもの(20時間の断食と続く回復日の無制限の摂食)。
これら4つの条件のうち、iTRFのみがショウジョウバエの寿命を延長した。雌は18%、雄は13%、それぞれ延長したという。
20時間の断食というタイミングが重要だったという。20時間オーバーナイトで断食して、翌日の昼食時にそれをやぶったハエだけが寿命を延ばした。昼間の間中断食して、夜間にだけ食べたハエの寿命には変化が見られなかった。
研究者らにとって、時間の役割は、断食が長寿にどのように関連しているかについての大きな手がかりだったという。断食後に細胞洗浄プロセスが始まることを発見したが、それは夜中に断食したときだけだった。この細胞洗浄プロセスはオートファジー(ギリシャ語で自食)と呼ばれるもので、このプロセスは細胞の損傷した成分を洗浄してリサイクルすることで加齢を遅らせることが知られている。
「iTRFの寿命を延ばす利点には、機能的な概日リズムとオートファジーの要素が必要であることがわかった」とシライ=ハイザ准教授は語っている。「これらのプロセスのいずれかが中断されたとき、食事は動物の寿命に影響を与えなかった。」
iTRFは、ハエの寿命を延ばしただけでなく、ハエの「健康寿命」を改善し、筋肉とニューロンの機能を高め、加齢に伴うたんぱく質凝集を減らし、筋肉と腸組織の加齢マーカーの発症を遅らせたという。
ヒトの細胞は同じ細胞洗浄プロセスを使用するため、この調査結果は、行動の変化や洗浄プロセスを刺激する薬がヒトに同様の健康上の利点をもたらし、加齢性疾患を遅らせ、寿命を延ばす可能性を高めるという。
「どんな種類の制限された食事も難しい」と筆頭著者のマット・ウルゲレー博士は言う。「それは多くの規律を必要とする。そして人間の時間制限断食のほとんどの研究では、それをより許容できるようにするためにチートデイが組み込まれている。オートファジーを薬理学的に、特に夜間に強化できれば、同じ健康上の利点を得るのははるかに簡単になるだろう。」
出典は『ネイチャー』。 (論文要旨)
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