2021.9.24
, EurekAlert より:
ビタミンAを腸内の免疫細胞に取り込む仕組みが発見された。このことは、消化器疾患治療の一助となるほか、ある種のワクチンの有効性を向上させるのに役立つ可能性があるという。米テキサス大学南西医療センターの動物実験から。
「免疫機能のこの重要な側面についてより多くのことがわかりましたので、最終的にはビタミンAを疾患の治療または予防のため、免疫システムに送り込む方法を操作できるようになるかもしれません」とフーパー博士は話している。
ビタミンAは、身体のあらゆる組織にとって重要な脂溶性の栄養素だ。体内で利用する前にはレチノール、そしてレチノイン酸に変換される。獲得免疫のシステム、つまり、過去の感染やワクチンによる免疫記憶に基づいて特定の病原体に反応するタイプの免疫システムにとって、極めて重大なものとなっている。
研究者らは、骨髄細胞と呼ばれるいくつかの腸内免疫細胞がレチノールをレチノイン酸に変換できることを知っていたが、このタスクを実行するために細胞がどうやってレチノールを得ているのかは謎だったという。
筆頭著者のバン博士らはレチノール結合たんぱく質のファミリーに焦点を当て、生化学的手法により、LDL受容体関連たんぱく質1(LRP1)がそのカギになっていることをつきとめた。
LRP1は、30年以上前に同センターのヘルツ教授により発見されており、1985年のノーベル医学・生理学賞の受賞につながっている。
今回、バン博士・ヘルツ教授らのグループはLRP1が腸の骨髄細胞に存在し、レチノールを細胞内部に運んでいるように見えることを示した。遺伝子操作によってマウスのこの受容体の遺伝子を削除し、骨髄細胞のビタミンA誘導体取り込みを妨害したところ、腸内の獲得免疫システムは事実上消失したという。T細胞とB細胞、および獲得免疫の重要な構成要素である免疫グロブリンA分子が大幅に減少したのだ。
次に、研究グループは、LRP1のあるマウスとないマウスのサルモネラ感染に対する反応を比較した。すると、LBP1のないマウスは、感染にすぐ負けてしまったのだという。
これらのことから、LRP1はレチノールが骨髄細胞に入るための運び屋であることが示唆された。このプロセスを阻害する方法を開発できれば、炎症性腸疾患やクローン病など、腸に影響を与える炎症性疾患の免疫応答を低下させることができるかもしれないという。
また一方で、LRP1活性を高める方法が発見されれば、免疫活性を高め、経口ワクチンの効果を高めることができるだろう、とのことだ。
出典は『サイエンス』。 (論文要旨)
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