2021.9.24
, EurekAlert より:
身体に様々な悪影響を及ぼすとされる体内時計の乱れを、プレバイオティクスの摂取によってより迅速に修復できる可能性が示唆された。米コロラド大学による動物実験から。
時差のある地域への移動や、徹夜作業、夜勤などにより、概日リズム(体内時計)は乱れ、睡眠や精神状態、代謝、特定の病気のリスクなど多くの悪影響が及ぶ可能性のあることが広く知られている。
今回の新しい研究では、腸内の「善玉菌の食物」として役立つ「プレバイオティクス」が、概日リズムの乱れをより早く修復させるのに重要な役割を果たす可能性を示唆している。
「この研究は、腸内の善玉菌とそれらが放出する代謝物を促進し安定化することにより、概日リズムの乱れに対し回復力を高めることができるかもしれないことを示唆しています」と、上級著者のフレシュナー教授は述べている。
乳酸菌など、腸内環境を整える微生物のうち、生きて腸に到達できる有用な微生物をプロバイオティクスとよぶ。そしてプロバイオティクスの「エサ」となり、その増殖を助けるものをプレバイオティクスといい、たとえば玉ねぎなどに豊富に含まれるオリゴ糖などがある。
先行研究では、プレバイオティクスを含む飼料を与えられたラットはより良く眠ることができ、急性ストレスによる身体的影響に対してより抵抗力があることが示されている。
そこで今回、米国海軍の資金提供により現役の兵士の日常を想定した動物実験を行い、時差ぼけ、不規則な作業スケジュール、自然光の遮断などによる体内時計の乱れに対し、プレバイオティクスが回復力を向上できるかどうかを調べた。
「彼らは世界中を移動しているため、頻繁にタイムゾーンの変更があります。何ヶ月も水中にいる可能性のある潜水艦の乗組員では、概日リズムの乱れは現実的な問題になりえるのです」と、筆頭著者のトンプソン氏は述べている。「このプロジェクトの目標は、これらの影響を軽減する方法を見つけることです」。
この実験では、プレバイオティクス2種(ガラクトオリゴ糖・ポリデキストロース)を強化した餌または通常の餌をラットに与え、ラットの明暗サイクルを8週間に渡り操作した。人間でいえば、時差12時間の場所に毎週、2か月に渡って移動することに相当する。
結果、プレバイオティクスを与えられたラットは、睡眠と覚醒のサイクルと深部体温をより迅速に再調整し、ストレスによって乱されがちな腸内細菌叢の変化に抵抗した。さらに、より良い細菌を保持し、時差ぼけのような状態から保護する代謝物を生成していることもわかった。
研究グループは、プレバイオティクスが人間に同様の影響をもたらす可能性があるかを検証するための臨床試験を現在行っているという。
出典は『脳、行動、そして免疫』。 (論文要旨)
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