2021.9.17
, EurekAlert より:
どれくらい食べるかよりは、何を食べるかが、肥満蔓延の根底にある原因かもしれない、という『米国臨床栄養学雑誌』の視点欄記事。
アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の統計によれば、米国成人の40%以上が肥満の影響を受けていることが示されている。肥満によって心疾患、脳卒中、2型糖尿病、ある種のがんのリスクが高まる。米国農務省の米国人のための食事ガイドライン2020-2025は、体重を減らすには「食べ物や飲み物から得るカロリーを減らし、身体活動を通じて消費されるカロリーを増やす必要がある」と述べている。
体重管理のためのこのアプローチは、体重増加がエネルギー消費よりも多いエネルギー摂取によるものだ、という100年前のエネルギーバランスモデルに基づいている。口当たりがよく安価な加工食品に囲まれた今日の世界では、人々は簡単に必要以上に多くのエネルギーを摂取でき、座位行動の増加と相まって、不均衡が増大している。一方で、何十年にもわたった公衆衛生メッセージが人々に摂食量を減らし運動量を増やすように勧めているにもかかわらず、肥満率は着実に上昇している。
著者らは、エネルギーバランスモデルの根本的な欠陥を指摘し、代替モデルである炭水化物-インスリンモデルが、肥満と体重増加をより良く説明する、と主張している。炭水化物-インスリンモデルは、より効果的で長期的な体重管理戦略への道筋を示しているという。
筆頭研究者のデヴィッド・ルードヴィヒ教授によれば、エネルギーバランスモデルは、我々が体重増加の生物学的原因を理解する助けにならないという。「例えば思春期に急成長するときには摂食量が1日1,000kcal増加する。でも彼らの過食が急成長を引き起こしているのだろうか、あるいは急成長が彼らを空腹にして過食させるのだろうか?」
エネルギーバランスモデルとは対照的に、炭水化物-インスリンモデルでは大胆な主張をする:「過食は肥満の主要な原因ではない。」その代わり、炭水化物-インスリンモデルは、現在の肥満蔓延の原因の多くを、高血糖負荷のある食品、特に加工された急速に消化可能な炭水化物の過剰摂取を特徴とする現代の食事パターンに負わせている。これらの食品は、我々の代謝を根本的に変え、脂肪の蓄積、体重増加、および肥満を促進するホルモン反応を引き起こすのだという。
高度に加工された炭水化物を食べると、身体はインスリン分泌を増加させ、グルカゴン分泌を抑制する。これによって、脂肪細胞に信号が送られ、より多くのカロリーを蓄えて、筋肉やその他の代謝的に活性な組織に燃料を供給するために利用できるカロリーを減らす。脳は身体が十分なエネルギーを得ていないと認識し、それが空腹感につながる。さらに、身体が燃料を節約しようと代謝が遅くなる可能性がある。こうして、我々は過剰な脂肪を獲得し続けても、空腹が維持される。
肥満の蔓延を理解するには、我々がどれだけ食べているかだけでなく、我々が食べる食物がホルモンと代謝にどのように影響するかを考慮する必要がある。すべてのカロリーが似た影響を身体にもたらすという主張により、エネルギーバランスモデルはパズルのこの重要な部分を見逃しているのだという。
炭水化物-インスリンモデルは新しいものではないが(その起源は1900年代初頭にさかのぼる)、今回の記事は、17人の国際的な専門家による、それに関する現在まででもっとも包括的なものだという。著者らは増加している炭水化物-インスリンモデルを支持するエビデンスを要約した。さらに、著者らは、将来の研究を導くために2つのモデルを区別する一連の検証可能な仮説を明らかにした。
エネルギーバランスモデルよりも炭水化物-インスリンモデルを採用することは、体重管理と肥満治療に根本的な影響を及ぼすであろう。炭水化物-インスリンモデルは、食べる量を減らすという、長続きのしない戦略ではなく、何を食べるかにより多く焦点を当てた別の行き方を示唆している。ルードヴィヒ教授によれば、「低脂肪ダイエットの時代に過剰に供給されるようになった迅速に消化される炭水化物の摂取を減らすことは、体脂肪を蓄積する根本的なドライビングフォースを減らす。その結果、人々は空腹と葛藤がより少ない状態で減量できるようになるだろう。」
著者らは、両方のモデルを最終的に検証し、おそらくエビデンスによりよく適合する新しいモデルを生成するために、さらなる研究が必要であることを認めている。この目的に向けて、著者らは、建設的な言説と「厳密で偏りのない研究で予測を検証するための多様な視点を持つ研究者間の協力」を求めている。
出典は『米国臨床栄養学雑誌』。 (論文要旨)
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