2021.9.2
, EurekAlert より:
フルクトース(果糖)を摂取すると消化管の細胞が変化し、より多くの栄養素が吸収されるようになるようだ、という米国ワイルコーネル医科大学などから前臨床試験の報告。世界中で増加しているフルクトース摂取と肥満および特定のがんの増加率との間のよく知られた関連を説明するのに役立つ可能性があるという。
本研究は、小腸の内側を覆う細い毛のような構造である絨毛に対する高果糖食の影響に焦点を当てている。絨毛は腸の表面積を拡大し、身体が消化管を通過する食物から脂肪を含む栄養素を吸収するのを助ける。本研究では、フルクトースを含む食餌を与えられたマウスは、フルクトースを与えられなかったマウスよりも絨毛が25%から40%長いことがわかったという。さらに、絨毛の長さの増加は、動物の栄養吸収、体重増加、脂肪蓄積の増加と関連していた。
研究チームでは絨毛を研究する予定はなかったが、2019年の研究で、フルクトースが大腸がんのモデルマウスの腫瘍サイズを増加させる可能性があり、フルクトース代謝をブロックすることでそれを防げることがわかった。フルクトースは、小腸の過形成も促進すると思われたので、研究チームは、顕微鏡下でマウス由来の組織へのフルクトースの影響を検証した結果、高果糖食がマウスの絨毛の長さを延ばすことを発見したという。
絨毛の機能が変化したかどうかを知るために、マウスを3群に分けて実験を行った。通常の低脂肪食、高脂肪食、およびフルクトースを添加した高脂肪食である。その結果、フルクトースの添加で、長い絨毛を発達させただけでなく、高脂肪食単独マウスよりも肥満した。
研究チームは、代謝の変化を詳しく調べ、フルクトース-1-リン酸と呼ばれるフルクトースの特定の代謝物が高レベルで蓄積していることを発見した。この代謝物は、ピルビン酸キナーゼと呼ばれるグルコース代謝酵素と相互作用して、細胞代謝を変化させ、絨毛の生存と伸長を促進した。ピルビン酸キナーゼまたはフルクトース-1-リン酸を生成する酵素を除去した場合、フルクトースは絨毛の長さに影響を与えなかった。
研究者によれば、マウスでの観察は進化の観点から理にかなっている。「哺乳類、特に温帯で冬眠する哺乳類では、果実が熟す秋にフルクトースが多く利用可能になる。フルクトースをたくさん食べると、これらの動物がより多くの栄養素を吸収して脂肪に変換するのに役立つ可能性がある。脂肪は冬を乗り切るために必要だ。」
「フルクトースは、高フルクトースコーンシロップ、テーブルシュガー、または果物などの天然食品に由来するかどうかにかかわらず、現代の食事にほぼ遍在している」と別の研究者は語っている。「フルクトース自体は有害ではない。問題は過剰摂取である。我々の身体は、これはど多くのフルクトースを食べるようには設計されていなかったのである。」
出典は『ネイチャー』。 (論文要旨)
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