2021.8.13
, 国立健康・栄養研究所 より:
総エネルギー消費量の絶対値は10代後半で最も高くなり、その後わずかに低下するが60代までは一定の値を示すようだ、という国立健康・栄養研究所などの国際研究チームによる研究報告。乳児は極めて多くのエネルギーを必要としており十分に食べる必要があるという。
国立健康・栄養研究所の山田陽介特別研究員と吉田司研究員は、筑波大学の下山寛之助教、京都先端科学大学の木村みさか客員研究員らと共に、国際的な研究者チームの一員として、世界29カ国の生後8日から95歳までの6,600人以上の二重標識水法のデータベースを構築し、ヒトの生涯にわたる1日当たりの総エネルギー消費量について分析した、と『サイエンス』誌に発表した。
総エネルギー消費量の絶対値としては、10 代後半で最も高く、その後わずかに低下したのち、60 代までは一定の値を示していた。体格調整した総エネルギー消費量は、乳児が最も高い代謝率を有していた。総エネルギー消費量は生後 12 カ月の間に急増し、1 歳の誕生日には、大人に比べて50%も速くエネルギーを消費していた。すなわち、乳児は体格から予想されるよりもはるかに多くのエネルギーを必要とし、この時期に十分に食べることができないと生存することが難しく、生存できたとしても健康的に成長する可能性が低い理由を部分的に説明している可能性がある。
中年期の代謝の減速は年にわずか 0.7%と穏やかであり、これは中年太りのことを考えると予想外の現象にみえるかもしれないという。一方で90代の人は、中年の人よりも 1日当たりの必要なエネルギーが 26%少なくなっていた。
これらの結果は、ヒトの生涯における細胞・組織の代謝が加齢にともなってダイナミックに変動することを示しており、そのメカニズムを調べる研究が今後期待される。
出典は『サイエンス』。 (論文要旨)
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