2021.7.26
, EurekAlert より:
大規模な季節性および集団内のビタミンD状態の差異を考慮して臨床試験をデザインするための新奇なツールセットを開発した、という愛蘭トリニティカレッジダブリンからの研究報告。
本研究は、ビタミンD補給が特定の疾患に対して有効であるかどうかを確立するための臨床試験の枠組みを提供するものだという。
ビタミンD欠乏症は様々な疾患と関連している。ビタミンDと疾患の間には因果関係が存在する可能性もあるが、別の要因との相互作用でビタミンDが影響を及ぼしているように見えるだけかもしれない。
多くの観察研究及び実験研究から、ビタミンD補給が健康に有益であることが示唆されているが、ランダム化臨床試験(RCT)は多くの場合利益を示すことができていない。観察研究とRCTの結果の実質的な不一致は、公衆衛生上の激しい議論の的ともなっている。
この議論の過程で前面に出てきたのが、参加者間にビタミンD状態の大きな違いがあるために、ビタミンD補給の効果を見つけるのが困難になっている、というものである。最初から良好なビタミンD状態の健康な人にそれ以上の改善を期待するのは合理的ではない。ビタミンDがある疾患を100%予防できるとしても、全ての参加者が十分なビタミンD状態であれば補給の効果は見られないだろう、というのである。
研究チームは、夏にピークがあり冬に谷がある年間のビタミンD状態に個人間の変動を考慮したモデルを考案した。人々のベースラインのビタミンD状態の違いや、日照強度の変化による季節変動など、ビタミンDの臨床試験に干渉する可能性のある重要な問題を初めて体系的に調査したという。
そして、季節変動と相まって、参加者間のビタミンD状態の個人差が、真の効果を検出する臨床試験の能力に有害な影響を与える可能性があることを示した。
本研究においては、ビタミンDのRCTを成功させるための適切なサンプルサイズの決定に特に焦点が当てられている。集団内と季節性の変動を考えることで、充分な統計的パワーを得るための最小サイズが決められる。
調査の結果は、治療効果を検出できなかったいくつかのRCTで使用されたサンプルサイズが十分ではなかったことを示唆している。これらの研究では、ビタミンD補給が実際に機能していないのか(真の陰性)、またはサンプルサイズが小さすぎて検出されなかった(偽の陰性)かを知ることはできない。この結果は、充分に大きなサンプルを使用して、こうした問題の多くを再検討する必要がある可能性を示唆している。
研究チームによれば、適切な試験デザインによって、ビタミンDのRCTの統計的検出力は向上させることができる。それは、試験を実施する時期と、さらに重要なことは何人の参加者を集めるかを考慮して、ベースラインのビタミンD状態を調べることだという。
「我々の血中ビタミンDレベルは、季節変動する。我々のツールを使用すると、研究者はこれらの重要な特性を考慮しながら研究計画を立てることができる」と主任研究者のジェイソン・ワイズ博士はコメントしている。
出典は『サイエンティフィックレポート』。 (論文要旨)
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