2021.7.5
, EurekAlert より:
オックスフォード大学などによる国際的な研究チームは、人生の二大イベントである、寿命や疾患に影響を及ぼす生殖年齢に関与する数百の遺伝的マーカーを発見したと『ネイチャー人間行動』誌に発表した。
この論文の中で、研究チームは、我々のDNAから初体験と出産のタイミングに影響する遺伝子変異を含む371の領域(うち11は性特異的)を発見したと報告している。これらの遺伝子変異は、社会経済状態や出生時期のような環境因子と相互作用して、寿命や後年の疾患の予測因子になるという。
研究チームは、ヒト全ゲノムのゲノムワイド関連解析(GWAS)を行い、生殖行動に影響する遺伝子変異を検索した。この現在までで最大の研究は、男女387,338名の初体験年齢と542,901名の親になった年齢のデータを含むものである。
筆頭著者でオックスフォード大学のメリンダ・ミルズ教授は、「我々の研究が発見したのは、この我々の人生の最も根源的な部分を形作る数百の追加の遺伝子マーカーであり、それは不妊症や、後年の疾患、そして寿命についてのより深い理解をもたらす可能性を秘めている」と語っている。
この遺伝的信号は、社会的因子や環境によって駆動されるだけでなく、生殖生物学によっても駆動される、というのは、知見の中には卵胞刺激ホルモン、着床、不妊、精細胞分化に関与するものもあるからだ。
ミルズ教授は言う。「我々は既に子供の社会経済学的環境や教育レベルが生殖のタイミングの重要な予測因子であることを知っている。けれども、我々は、文字通り数百もの新しい遺伝子変異について興味をそそられるだけでなく、薬物中毒、性格特性との関係を明らかにしたことやいくつかの疾患や寿命を予測さえできたことに興味がある。」
「我々は、それが遺伝学と社会的予測因子、そして生殖を早めたり遅くしたりする環境の組み合わせであることを実証した。早い初体験や受胎の裏にある遺伝子が、行動的な脱抑制(ADHDのような)に関連しているだけでなく、薬物中毒や早期の喫煙にも関連しているというのは、本当に驚くべきことだ。あるいは、遺伝的に初体験や出産が遅い傾向にある者は、後の健康アウトカムがよりよく、長寿の傾向がある。これは小児期の社会経済状態の高さと関連がある。」
生殖行動を駆動する遺伝的因子は、2型糖尿病や心血管系疾患のような後年の疾患に強く関連していた。
「これらの生殖行動の裏にある遺伝子が、後年の疾患を理解する助けになるというのはエキサイティングなことだ。」
ミルズ教授は次のようにまとめている。「あなたの性生活を早く始めることは、小児期の不平等に起因するだけでなく、子宮頸がんやうつ病といった健康問題にもリンクする。我々は、早い初体験とADHD、早期喫煙のような薬物中毒の間に特に強い関連を発見した。我々の希望は、我々の発見が十代の精神問題や性的健康、不妊、後年の疾患のより良い理解につながり、治療の助けになることである。」
出典は『ネイチャー人間行動』。 (論文要旨)
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