2021.6.9
, EurekAlert より:
乳房の微生物叢は腸内のそれと同様に食事よって影響を受けるようだ。米国ウェイクフォレスト医科大学からの研究報告。
ヒトの体内の微生物叢は腸内だけでなく、乳房の微生物叢もあり、乳房の健康と乳がんにおいてそれが果たす役割は完全には理解されていない。
研究チームは、マウスを用いた動物実験で、魚油のサプリメントを含む食事が、乳房の微生物叢だけでなく、乳がん腫瘍も変化させる可能性があることを示した。
乳がんにかかりやすいマウスに高脂肪または低脂肪の飼料を与えたところ、高脂肪食を摂取したマウスは、低脂肪食を摂取したグループよりも腫瘍の発生が早く、腫瘍が大きくなったという。
次に、微生物叢を研究するために、研究チームは糞便移植を行った。低脂肪食を摂取するマウスは高脂肪食を摂取するマウスの微生物叢の移植を受け、高脂肪食を摂取するマウスは低脂肪食を摂取するマウスの微生物叢の移植を受けた。驚くべきことに、低脂肪食を摂取し、高脂肪食を摂取したマウスから微生物叢の移植を受けたマウスには、高脂肪食を摂取したマウスと同じ数の乳房腫瘍がみられたという。
さらに研究チームは、乳がん患者13名を対象とした二重盲検プラセボ対照臨床試験も実施した。患者は、乳腺腫瘤摘出術または乳房切除術の約 2-4週間前に、プラセボまたは魚油のサプリメントを摂取した。
その結果、魚油の補給によって、非がん性および悪性乳房組織の両方で乳房微生物叢が有意に変化したことが示されたという。4週間の魚油サプリの摂取によって、腫瘍に隣接する正常組織においてラクトバチルスの増加が観察された。動物モデルではラクトバチルスは乳がん腫瘍細胞の増殖を抑えるので抗がん効果が期待できるかもしれないという。バクテロイデスとルミノコッカスの増加も観察された。
「この研究は、腸と乳房の微生物叢を形成する上で食事が重要な役割を果たしているという追加の証拠を提供している」と主任研究者のキャサリン・クック助教授はコメントしている。
出典は『がん研究』。 (論文要旨)
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