2021.5.17
, EurekAlert より:
赤肉(哺乳類の肉)は心臓に良くない可能性が指摘されているが、脂肪分の少ない牛肉は適量なら、植物性食品をベースとした地中海式食事と組み合わせることで、LDLコレステロールなどを低下させ「心臓に優しい」ことが示唆された。米国ペンシルバニア州立大学の研究。
研究者のフレミング准教授は「果物、野菜、その他の植物性食品をベースにした健康的な食事には、赤身の牛肉など、他の食品を適量入れる余地があります」と述べている。「腰肉やもも肉のような赤身、または93%の赤身の牛ひき肉を食べることで恩恵を受けられる牛肉には、依然として重要な栄養素があるのです」。
共同研究者で米国農務省の主任研究員のベア氏は「この研究は、心臓の健康に役立つ可能性のある地中海式食に赤身の牛肉を含めることの重要性を強調しています」と付け加えている。
研究者らによると、牛肉など哺乳類の肉「赤肉」は、先行研究で心血管疾患のリスク増加と関連付けられている。しかし、赤肉が実際にこれらの影響を引き起こすのか、それとも赤肉を摂取する人にみられがちな食生活やライフスタイルによって引き起こさているのかは不明だ。
さらには、赤肉の摂取と健康について評価する際に、多くの研究が精肉と加工肉を混同してしまっているという。加工された赤肉は、精肉とは栄養面でかなり異なっている。たとえば、加工肉は塩分がはるかに多い。このようなことが、赤肉の研究結果に影響しているといえる。
「地中海式食は赤肉が少ないものなのです」とフレミング准教授。「しかし、多くの米国人が赤肉を好んでいますので、牛の赤身と地中海式食を組み合わせることが心血管のリスクマーカーにどのように影響するかを調べたいと考えました」。
本研究は59人を対象とし、以下4パターンの食事をそれぞれ4週間摂取してもらった。各期間のあいだは1週間空けることとし、研究の開始時と各期間の後に血液検査を行った。
@地中海式食+牛肉0.5オンス/日(約14g) A地中海式食+牛肉2.5オンス/日(約71g・米国人の平均摂取量と同等) B地中海式食+牛肉5.5オンス/日(約156g) C典型的な米国式食
なお、@〜Bのエネルギー産生栄養素バランスは脂質41%、炭水化物42%、たんぱく質17%としたほか、脂質の主要供給源はオリーブオイルとし、1日あたりの果物摂取量は3〜6サービング、野菜は6サービング以上とした。なお、牛肉の種類については、赤身または超赤身だった。
そして、磁気共鳴(NMR)技術を使用して、血液サンプル中のリポたんぱく質粒子の数とサイズを測定した。すると、参加者全員が、典型的な米国式食を摂った期間の後と比較して、地中海式食を摂った期間後のLDLコレステロールが低いことが明らかになった。LDL粒子の総数は、地中海式の3つの食事期間後すべてにおいて減少していたが、典型的な米国式食と比較して有意に減少したのは、1日あたりの牛肉摂取量が0.5オンス・2.5オンスの期間後のみだったという。
さらに、non-HDLコレステロールとapoB(脂質代謝に関与するたんぱく質で心血管疾患リスクの指標となる)は、3つの地中海式食期間すべての後で典型的な米国式食期間後よりも低下していたとのことだ。
出典は『米国臨床栄養学雑誌』。 (論文要旨)
|