2021.4.7
, EurekAlert より:
妊娠前・妊娠中ともにストレスの高かった母親からは、女の子の生まれる可能性が約2倍になる、というグラナダ大学の研究。この要因として、X染色体を持つ精子はY染色体を持つ精子よりストレス耐性が高いこと、また女の子の胎児の方がストレスに強く、流産しにくいことなどが考えられるという。
グラナダ大学(UGR)の科学者が実施した研究によると、妊娠前と妊娠中の両方でストレスを経験している女性は、男の子のほぼ2倍の女の子がいる可能性があるという。
研究チームは、108人の妊婦を対象に、妊娠前から妊娠9週までの期間の妊婦の髪の毛のコルチゾール(ストレスに反応して放出されるステロイドホルモン)濃度を分析して、赤ちゃんの性別との関連性があるかどうかを検証した。
妊娠のおよそ8-10週に採取された毛髪サンプル中のコルチゾールの測定は、過去3ヶ月間(発毛の1センチメートルあたり1ヶ月)の妊婦のコルチゾール濃度を示している。
解析の結果、女の子を出産した妊婦の、受胎前後のコルチゾール濃度は、男の子を出産した妊婦に比べて、ほぼ2倍高かったことが明らかになったという。
■ストレスの結果
研究チームによれば、妊娠、出産、さらには乳児の神経発達の過程における母親へのストレスの影響を示す十分な科学的証拠があるという。「具体的には、我々の研究グループは、母親の精神的ストレスが妊娠中の精神病理学的症状の増加、産後うつ病、分娩補助の可能性の増加、授乳開始にかかる時間の増加、または生後6か月の赤ちゃんの神経発達の遅滞を多くの論文で示している」と研究者は述べている。
「結果の考えられる説明の1つは、コルチゾール分泌の増加を伴う「ストレスシステム」(視床下部-下垂体-副腎システム)の活性化が、受胎時の性ホルモンの濃度を変化させることである。この変化の根底にあるメカニズムは明確ではないが、出生前ストレスのレベルが高いほど女性のテストステロンのレベルは高まるので、テストステロンが赤ちゃんの性別の決定に影響を与える可能性があるという証拠がある」と研究者は言う。
「X染色体を持っている精子(赤ちゃんが女性になることを決定する)は、ストレス下で子宮頸管粘液を通過する際に優れたパフォーマンスを発揮するという証拠もある。この場合、母親のストレスに関連するホルモンの変化により、これらの精子は、Y染色体を持っている精子(赤ちゃんが男性になることを決定する)よりも卵子に到達することに成功する可能性が高くなる。」
「この現象を説明しようとする他の可能な仮説もある。母親の深刻なストレスにより、妊娠の最初の数週間の間に医学的理由で男性の胎児のほうがより多く死亡する可能性が高い」と研究者は述べている。
■胎児へのストレスの影響
さらに、胎児がストレスの影響を受け易い例として、男性(XY)の胎児は女性(XX)の胎児よりもゆっくりと成熟することが証明されている、と研究者は言う。「男の子はより多くの妊娠合併症および早産と関連する傾向がある。出生時に、彼らはより短いテロメアを持っている可能性が高い。これにより、XY胎児は出生前の有害な環境に対してより脆弱になり、受胎前後に高レベルのストレスを経験する妊婦は男の子を出産する可能性が低くなる可能性があることが示唆される。」
出典は『健康疾病発達起源雑誌』。 (論文要旨)
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