2021.3.16
, EurekAlert より:
米国ジョンズホプキンズ大学の研究チームによる新しい「展望」欄記事は、身体的フレイルの背後にある理論とそれを治療する方法を詳述している。
医師は、フレイルを、怪我や病気などの身体的問題に直面したときに復元力が低下し、完全に回復することができなくなる、身体の複数システム間の調節不全として理解している。
「けれども、フレイルを科学的に定義することは困難な仕事だった」と主任研究者のラヴィ・ヴァラダン准教授は述べている。
今回研究チームは、脱力感、歩行速度の遅さ、低レベルの身体活動、倦怠感または疲労感、意図しない体重減少の5つの主要な臨床徴候および症状のうち3つ以上によって特徴づけられるフレイル診断システムを開発した。
研究チームによれば、フレイルは、代謝系、筋骨格系、ストレス応答系を含む主要な生理学的および生物学的システムが互いに同期しなくなり、問題に直面したときに不均衡な方法で相互作用する結果として発生する明確な状態であるという。これらシステム間の不調和は、最終的には機能と復元力の消失に至る閾値を超える。
記事の中で、ヴァラダン准教授らはジョンズホプキンズ大学の「2012女性健康加齢研究II」をエビデンスとして挙げている。85-94歳の女性が標準的な経口糖負荷試験を行ったところ、フレイルと診断された女性は、フレイルでない女性に比べて、平均して極端な反応を示し、平常値に戻る時間が長い傾向がみられた。これは代謝系の障害の兆候である。
同様に、この研究に参加したフレイルの女性は運動後の筋肉リカバリーを遅くする分子マーカーをもっていた。これは筋骨格系の障害の兆候である。また、ストレスに応答して分泌されるコルチゾールも低下していた。これはストレス応答系の障害の兆候である。
これらのシステムは互いにフィードバックするので、いずれかのシステムに問題が起きると他のシステムにドミノ効果がもたらされ、糖尿病、心血管系疾患、がんなどの疾患リスクが高まるという。
血糖値を下げる薬など、単一のシステムにのみ影響を与えるものではなく、身体運動などの複数のシステムを一度に対象とする介入は、フレイルを予防、遅延、または逆転させる可能性があると研究チームは述べている。
身体的フレイルのより良い理解は、人々がより健康的に歳をとる助けになるだろう、と筆頭著者のリンダ・フリード医師は述べている。
出典は『ネイチャー加齢』。 (論文要旨)
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