2021.2.25
, EurekAlert より:
GDF15を薬物として投与すると食欲と運動意欲を低下させるが、激しい長時間の運動によって体内で放出されたGDF15にはそのような効果はみられないようだ、というデンマーク・コペンハーゲン大学からの研究報告。
食べる量を減らすのを助けてくれる薬があれば、全世界6億5千万人の肥満者にとって福音となるかもしれない。最も最近の候補として研究者らが注目しているのは、GDF15というホルモンである。げっ歯類に投与すると、食欲が低下し体重が減少することが報告されている。
今回の研究において、研究チームは、ヒトの体が長時間の激しい運動後に大量のGDF15を作り出すことを発見した。これは生理学的なストレス信号と推定されるという。
この知見は、薬物として投与されたGDF15と激しい運動後にその応答として放出されるGDF15の大きな違いをクローズアップする。これはGDF15の食欲とエネルギーバランスにおける役割を理解する上で、極めて重要な点である。
「GDF15が生理学的な条件下におけるエネルギー代謝の制御因子であるかどうかは依然として解けない謎である」と主任研究者のクリストファー・クレメンゼン准教授は語っている。
研究チームの目標は、GDF15のエネルギー代謝と行動における生理学的な役割を理解することだった。最近のげっ歯類とサルの研究では、このホルモンを薬理学的に投与した場合、食欲が低下するが同時に吐き気や病気も促進することが示唆されていた。別の研究では、メトフォルミンの投与が、GDF15レベルを上昇させ減量を促進することが示されていた。
ところが、体内で自然に放出された場合のGDF15の機能については殆どわかっていないのである。研究チームはこの知識のギャップを埋めようと、ヒトとマウスで一連の実験を実験した。ヒトで2時間以上にわかって運動を続けると血液中のGDF15は4-5倍に増加し、GDF15の機能が運動誘発性ストレス信号であることが示唆されたという。
このアイデアを検証するために、研究チームは動物モデルを使用した。そして、GDF15を薬物としてマウスに投与すると、運動意欲が低下し食欲も減少することを発見した。けれども、生理学的なGDF15の放出を刺激するためにマウスに激しい運動をさせると、それは運動意欲を低下させず、食欲も減少させなかったという。
この知見は、生理学的なGDF15と薬理学的なGDF15の違いを強調するものであるという。クリストファー・クレメンゼン准教授は、このGDF15のミスマッチを理解するためにはより多くの研究が必要であるとしている。
出典は『ネイチャーコミュニケーション』。 (論文要旨)
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