2021.2.8
, EurekAlert より:
ティカマサラを食べるとき、人は疑問に思うかもしれない。スパイスは感染を止めるために使われているのだろうか? 恐らくそうではない、という豪州国立大学からの研究報告。
リンデル・ブロムハム教授ら研究チームは、なぜ世界中の暑い国が辛い食べ物を食べる傾向があるのか知ろうとした。この傾向は、「ダーウィンのガストロノミー」という熱帯諸国における文化的進化プロセスとして知られる理論に行き着く。これは、暑い国では感染症が多いために、抗菌性のあるスパイスが多用されるようになったというものである。
研究チームは、疑問を解くために、93種類のスパイスを含む70の地域料理から33,000のレシピを集めて、文字通りデータのスモーガスボード(ブッフェ)を楽しんだのだった。
「この理論は、スパイシーな食品が、食品による感染リスクが生存と健康維持における大きなコストとなり得る暑い気候の中で、人々の生き残るのを助けるというものだ」とブロムハム教授は語っている。
「けれども、我々はこの理論が検証に耐えられないことを発見した。スパイシーな食品はより暑い国々でみられるが、我々の分析からは、食品からの感染リスクを減らすための文化的適応が主要な原因と思われる明確な理由はみつからなかった。」
本研究では、その代わりに、スパイスの使用は食中毒のリスクに関連していると同時に、広範囲の健康アウトカムとも関連していることが示された。実際、スパイスの使用は、感染症による死亡だけでなく、交通事故死にも関連がみられたのである。
「したがって、寿命とスパイシーな食品の間には有意な関連がみられる」とブロムハム教授は言う。「けれども、それはスパイシーな食品が寿命を縮めるとか交通事故の原因になるということを意味しない。そうではなくて、すべてが一緒に上下する多くの社会経済的指標があり、それらの多くがスパイスの使用にも連動するということなのである。」
教授によれば、料理の辛さは、GDPや平均余命など多くの社会経済的指標に比例するため、主要な原因を特定することは難しいという。けれども、研究チームは、一部の地域で料理にスパイスを多く使用する理由について考えられる理由を除外することはできるという。
「より辛い食品は、気候変化、人口密度、文化的多様性によっては説明されない」と教授は言う。「そして、スパイスの使用パターンは、生物多様性、栽培されているさまざまな作物の数、さらにはその地域で自然に栽培されているスパイスの数によっても左右されているようには見えない。」
出典は『ネイチャー人間行動』。 (論文要旨)
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