2021.1.26
, EurekAlert より:
米国の乳児はかなりの割合で母乳の利用と免疫系の発達、そして疝痛やおむつかぶれの原因となる病原体からの保護のカギとなる重要な細菌を欠いているようだという。米国イヴォルブ・バイオシステムズ社などによる研究報告。
研究によれば、米国の乳児のおよそ10人に9人までがビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium longum subsp. infantis)を腸内に欠いているという。これはビフィズス菌の一種で、乳児の腸の健康に極めて重要であり、母乳の栄養上のメリットを完全に解き放つ能力を有している。
研究チームは、米国の5州(CA, GA, OR, PA, SC)で生後6カ月未満の乳児227名から糞便検体を採取し腸内細菌の種類と存在量について分析した。糞便検体は、ヒト母乳を完全に利用できる細菌の能力が評価された。また抗生物質耐性菌の有無も確かめられた。
解析の結果、ビフィズス菌は当初期待されたほど豊富には存在せず、含まれていたのはヒト母乳オリゴ糖(HMO)の代謝能力が遺伝的に限られているB.ブレヴェ、B.ロンガム、B.ビフィダムなどであり、完全なHMO利用能力をもつB.インファンティスは例外的に稀な存在であった。
「乳児の大多数は生後数週間目からこの重要な腸内細菌が不足しており、これはほとんどの親と小児科医のレーダーから完全に外れていた」と共同研究者のカール・シルベスター教授は述べている。
研究チームはまた、潜在的なリスクを有する細菌が乳児の腸内細菌叢の平均93%を占めていることも発見した。これらの細菌の多くは、抗生物質耐性遺伝子を持っていることが知られており、実際今回の解析では325の抗生物質耐性遺伝子が見つかった。
「乳児の腸は本質的に出生時は白紙の状態であり、母親や環境から急速に細菌を獲得する。身体に良い細菌が大幅に不足しているだけでなく潜在的な病原因が非常に多く存在したことは驚かされたが、それは極めて広範囲に広まっているようだ。米国の乳児の腸内細菌叢は明らかに機能不全に陥っており、これが今日全米で見られる乳幼児期の病気の重要な要因になっていると我々は信じている」とシルベスター教授はコメントしている。
出典は『サイエンティフィックレポート』。 (論文要旨)
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