2020.12.28
, EurekAlert より:
妊娠中のビタミンD欠乏は、男児の自閉症スペクトラム障害(ASD)を誘発する可能性が示された。ASDが男児では3倍多い理由の解明の手掛かりとなるかもしれない。豪・クイーンズランド大学の動物実験から。
同大学クイーンズランド脳研究所のアイルズ教授らの研究グループはラットを用いた実験で、母親が妊娠中にビタミンDの欠乏状態に陥った場合、雄の胎仔の発達中の脳においてテストステロンの増加を引き起こすことを発見した。
「自閉症スペクトラム障害(ASD)の生物学的原因は不明ですが、多くの危険因子の1つである母親の低ビタミンD状態が、雄の胎仔の脳内、および母体の血液と羊水中のテストステロンの増加を引き起こすことを示しました。ビタミンDの役割はカルシウムの吸収に加えて、多くの発達過程に重要です。
私たちの研究はまた、ビタミンDが不足している雄の胎仔は、テストステロンを分解する酵素の発現が抑えられることでテストステロンレベルの上昇につながる可能性を示しています」。
アイルズ教授の以前の研究において、ビタミンDは脳の発達に重要な役割を果たしており、妊娠中のマウスにビタミンDサプリメントを与えることで、仔のASD様特性が完全に抑えられることが示されている。
共著者のアリ博士は、発達中の脳がテストステロンのような性ホルモンに過剰にさらされることがASDの根本的な原因であると考えられているが、理由は不明のままだとしている。
「ビタミンDは多くの性ホルモンを制御する経路に関与しています」とアリ博士。
「ラットの母親が低ビタミンD食を与えると、雄の胎仔の脳に対する高レベルのテストステロンへの曝露を引き起こします」
アイルズ教授によるとこの研究は、ASDの既知の危険因子が胎仔の脳と母親の血液の両方において、テストステロンを変化させることを初めて示したと述べている。このことは、ASDが男性でより多くみられる理由の1つと考えられる。
「私たちはASDの1つの危険因子(発達中のビタミンD欠乏症)のみを研究しました。次のステップは、母親のストレスや低酸素症などの他の考えうる危険因子を調べ、それらが同様の影響を与えるかについて確認することです」
出典は『分子自閉症』。 (論文要旨)
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