2020.12.17
, EurekAlert より:
水分が、肥満や糖尿病に関連するホルモンの一種バソプレシンを抑制するようだ、という米国コロラド大学アンシュッツ医学キャンパスからの研究報告。
研究チームは、フルクトース(果糖)がバソプレシンの分泌を刺激するが、水分がその効果を抑えて症状を緩和できることをマウスを用いた動物実験で発見したという。
「本研究の臨床的な意義として挙げられるのは、水分の摂取をただ増やすことによって、効果的に肥満やメタボリック症候群を抑えられるかどうかを検証する研究が推奨されるということだろう」と筆頭研究者のミギュエル・ラナスパ准教授は語っている。
研究チームは、フルクトース入り水をマウスに与えた結果、脳を刺激してバソプレシンの分泌が促進されることを発見した。バソプレシンは、水を脂肪の形で貯蔵するので、バソプレシンの分泌は脂肪の蓄積を促進した。糖類なしの水を与えることでマウスの肥満は減少したという。
「我々は、このバソプレシンの作用が、V1bと呼ばれる特別な受容体を通じて起きることを発見した。この受容体はしばらく以前から知られていたが、その本当の機能はだれにもわからなかった。我々は、V1bを欠くマウスでは、糖類の効果が完全に抑えられたことを発見した。我々はまた、水分の補給がバソプレシンの効果を抑え、肥満の予防と治療に有用であることも示した」とラナスパ准教授は語っている。
研究チームは、脱水が脂肪の形成を刺激することも発見した。
「これは、なぜ砂漠の哺乳類に高濃度のバソプレシンがみられるのかということの説明になる。バソプレシンは水を脂肪の形で貯蔵して保存するのである」と主任研究者のリチャード・ジョンソン教授は語っている。
このデータは、肥満者がしばしば脱水症状を示すという観察ともよく一致するものだという。また、高塩分食が肥満や糖尿病の原因になる理由も説明できるという。
研究チームは、水分補給が効果的にメタボリック症候群を予防できるかもしれないという。
「バソプレシンをブロックする最良の方法は水を飲むことだ」とラナスパ准教授は言う。「メタボリック症候群の治療に、安価で容易な方法があるかもしれないということは、我々の希望である。」
出典は『JCIインサイト』。 (論文要旨)
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