2020.12.11
, EurekAlert より:
腸の健康の重要性が次々と明らかになっている近年「生きた善玉菌の摂取は健康を増進する」と信じる人は多い。しかし、日常的にどの程度の量を摂取すべきかについてのガイドラインを作成するには根拠が不十分な現実があるという。米・カリフォルニア大学などの研究。
多くのありふれた食品、たとえばヨーグルトなどの発酵食品や新鮮な果物や野菜などには、生きた微生物が含まれている。そして、人間は何千年もの間、毎日の食事でこれらの安全で有益と思われる細菌を摂取してきたが、生きた細菌は他の食品成分に比べると圧倒的に注目度が低い。腸の健康の重要性に対する世界的な認識の向上に伴い、多くの人々が「生菌の摂取は健康を増進する」と信じているのだが、これまでのところ、専門家が私たちが日常的にどの程度の量を摂取すべきかについてのガイドラインを作成することはできないでいる。
本論文では、これまでの生菌と人間の健康増進との関連のエビデンスの脆弱さを確認し、研究の明確な欠陥を強調し、生菌の摂取と健康上の成果との関係を定量化する計画を立てると説明している。しかし道すじは困難なものだという。エビデンスは限られており、現在の栄養研究における食事摂取量の報告には誤りが頻繁に見受けられ、さらに消化管の微生物叢は複雑であるため、健康上の利点のメカニズムを発見するのは難しい。
「よく、腸内細菌叢に『善玉菌』を追加し続けるべきだということを耳にします」と、論文の共著者であり、国際プロバイオティクスおよびプレバイオティクス科学協会(ISAPP)のサンダース博士は述べている。「これは直感的に理解できますが、単にこれが真実であると思い込むのではなく、着想の科学的根拠を確立することが重要です。私たちの論文は、世界中の科学者が厳密な方法で根拠の土台を造り始めることを求めています」
「現在、世界中の食品ガイドでは生菌の毎日の摂取を推奨していません」とサンダース博士。「生菌の継続的な摂取は私たちの生死を分けるほどのものではないかもしれませんが、それらを無視することによって、私たちはさまざまな人々の健康をサポートする重要な機会を逃しているのかもしれません」。
出典は『栄養学雑誌』。 (論文要旨)
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