2020.11.27
, EurekAlert より:
2型糖尿病において、インスリンを効きにくくさせると考えられる特定の成分は、腸内細菌の変化によってレベルが上昇するようだ。またこの成分は、糖尿病予備軍の人にも多く見られるという。スウェーデン・イェーテボリ大学の研究。
腸と腸内細菌は数多くの病気において重要であると考えられており、腸内細菌叢が食事のいくつもの成分の分解に影響を与えることが示されている。腸内細菌叢と2型糖尿病に関するこれまでの研究では、酪酸を生成する食物繊維と、それらが血糖コントロールとインスリン抵抗性に与える影響の可能性に焦点が当てられてきた。
イェーテボリ大学のフレデリク・ベッキエド教授らの研究グループは先行研究で、糖尿病は腸内細菌の組成の変化に関連している可能性があること、そしてそれは病気を招くおそれのある分子の産生を増加させることによるものとしていた。
具体的には、腸内細菌叢の変化がアミノ酸の一種ヒスチジンの代謝の変化を引き起こし、それによってインスリンの血糖降下作用を妨げる分子「プロピオン酸イミダゾール」の産生の増加をもたらすことを示したのだ。
今回の研究では、1,990人の被験者を対象としたヨーロッパ3か国での大規模な調査により、2型糖尿病患者の血中のプロピオン酸イミダゾールのレベルが上昇したことを初めて示した。
「私たちの研究は、プロピオン酸イミダゾールが他の集団の2型糖尿病においても上昇していることを明確に示しています」とベッキエド教授は述べている。
「この研究はまた、いわゆる糖尿病前症(糖尿病予備軍)において、糖尿病との診断がなされる前であっても、プロピオン酸イミダゾールのレベルが上昇していることを示しています。これは、プロピオン酸イミダゾールが疾患の進行の一因である可能性を表しています」
「2型糖尿病の人に見られる腸内細菌叢の変化とは、正常な耐糖能のある人よりも種類が少ないことで、この状態は他の病気にも関連しています。研究者たちは、これがアミノ酸・ヒスチジンの代謝の変化につながるのではと推測しています」。
共同研究者で、仏・ソルボンヌ大学のカリーヌ・クレマン教授は「興味深いことに、私たちの調査結果は、プロピオン酸イミダゾールのレベルに影響を与えているのは、食事から摂取したヒスチジンではなく、腸内細菌叢の変化であることを示唆しているのです。不健康な食事は、2型糖尿病患者のプロピオン酸イミダゾールの増加とも関連しています」としている。
出典は『ネイチャーコミュニケーション』。 (論文要旨)
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