2020.11.9
, EurekAlert より:
セリアック病の治療には、プロバイオティクスとトリプトファンの組み合わせが助けになるかもしれない、というカナダ・マクマスター大学からの研究報告。
研究チームは、七面鳥にも大量に存在するアミノ酸のひとつトリプトファンが、ある種のプロバイオティクスによって代謝され、グルテンフリーの食事と共に症状の改善に有効である可能性を発見したという。
「セリアック病の唯一の治療法はグルテンフリーの食事療法を厳守することだ。でもこれは従うのが難しく、必ずしも腸の完全な回復や症状の解消につながるとは限らない」と主任研究者のエレナ・ヴェルドゥ教授は述べている。
トリプトファンは必須アミノ酸であり、体内で生成することはできず、鶏肉、チョコレート、バナナ、ブロッコリー、キャベツ、カリフラワーなどのアブラナ科の野菜などの食品を通じて摂取する必要があるという。
トリプトファンは体内の多くの機能に必要であり、腸内の細菌によって分解され、炎症を制御する腸内膜の受容体と相互作用する代謝物を生成する。これらの受容体のひとつがアリール炭化水素受容体(AhR)であり、この受容体の最適ではない活性化は、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患を含む慢性腸炎に関係しているといわれている。
「セリアック病では、特定の素因のある遺伝子を持つ人が食事でグルテンを摂取すると、上腸の内壁が破壊される」と共同研究者のヘザー・ガリポー博士は述べている。
「けれども、セリアック病の遺伝子を持ち、グルテンを食べている人全員がこの病気を発症するわけではない。」
研究チームは、セリアック病の環境要因として、小麦たんぱく質の細菌代謝障害の研究を行った。対象者は、セリアック病患者、グルテンフリー食を2年継続したセリアック病患者、そして健康な人々とした。
その結果、セリアック病患者は、トリプトファンの細菌代謝が低く、腸内細菌叢が、炎症を制御し、腸バリアを保護するAhR経路を適切に刺激しないことがわかったという。
そうした変化は、2年間のグルテンフリー食で部分的に改善されたという。
さらに、研究チームは、セリアック病の遺伝子を発現するマウスを使用して、トリプトファンを代謝することが知られている細菌である乳酸桿菌の2つの菌株が、AhRを活性化し、グルテンによる炎症を軽減することを示した。
本研究結果は、セリアック病の症状をよりよくコントロールするためには、腸内のトリプトファン代謝を標的とすることが潜在的な治療価値をもたらすかもしれないことを示すものだと研究チームは強調している。
出典は『サイエンストランスレーショナル医療』。 (論文要旨)
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