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[栄養]  肥満と病気は劇的な食事の変化が原因?
2020.11.6 , EurekAlert より:   記事の難易度 3
  

食事が動物ベースから炭水化物ベースに変わったトゥルカナの人々の間で、肥満、糖尿病、および心血管疾患が増加していることがわかった、という「不一致」仮説を支持する米国プリンストン大学などからの研究報告。

肥満、糖尿病、心血管疾患などは、我々が実際に食べる食事と我々の体がそのために準備している食品との間の「不一致」の結果なのだろうか?

「不一致仮説」は、我々の身体が、祖先が食べた食物を消化するように適応進化したので、根本的に新しい食物のセットを代謝することにはほぼ失敗する、と主張していいる。

「人間は、我々が現在に生きているものとは非常に異なる環境の中で進化した」と筆頭研究者のアマンダ・リー博士は述べている。「誰の食事も普遍的に悪いということはない。それはあなたの進化の歴史とあなたが現在食べているものとの間のミスマッチということなのだ。」

「不一致」のアイデアは何年も前から存在していたが、直接テストするのは困難だった。ほとんどの実験は、西洋人を狩猟採集社会のメンバーと比較することに焦点を当てているが、それは必然的に食事の影響を他の遺伝的またはライフスタイルの違いと混同することになる。

研究者らは、ケニア北西部の人里離れた砂漠に暮らす自給自足レベルの牧畜民であるトゥルカナに着目した。1980年代、極端な干ばつと近くでの石油の発見が相まって、この地域は急速に変化した。人口の大部分は遊牧民のライフスタイルを放棄し、一部は村に住み、その他は都市に住んだ。伝統的なトゥルカナ族は今でも家畜(ヒトコブラクダ、ゼブ牛、脂尾羊、山羊、ロバ)に依存して生活しているが、都市に住むトゥルカナ族は炭水化物と加工食品をはるかに多く含む食事に切り替えている。これは、グローバル化が進んだ結果で、世界中で広く見られる傾向であるという。

「我々は、ほぼ80%の動物性食品(たんぱく質と脂肪が豊富で、炭水化物をほとんどまたはまったく含まない食事)に依存していた人々が、主に炭水化物の食事に移行する効果を研究する機会があることに気づいた」と主任研究者のジュリアン・アイロレス助教授は述べている。

「これは前例のない機会をもたらした。その食事は彼らの最近の進化史と比較的「一致した」ものから非常に「不一致」なものまでのライフスタイルの勾配全体に広がっていた。」

研究チームは、44か所1,226人のトゥルカナ族成人から健康データをインタビューによって収集した。

「このような調査を行うには、地域コミュニティやより遠隔のコミュニティに対する多大な信頼と敬意が必要だ。世界にはうまくいかない研究も多いが、それは研究者が落下傘部隊のように急速に立ち入りまた出ていったときだ。それでは研究者は人々に信用されない。そしてただ多くの不安や問題を引き起こす。我々はここに25年いてコミュニティを理解している。我々の研究スタッフの多くは地元のコミュニティの人々だ。」

このプロジェクトはアイロレス助教授がトゥルカナ盆地研究所を訪問した時に始まったという。

砂漠の奥深く、村から何マイルも離れた場所で、酷暑のクリスマスの日に、アイロレス助教授は、女性のグループが、頭上の瓶に水を入れて運んでいるのを見て驚いたという。同行者は、その数瓶の水が、1週間分の水のすべてであると告げたのだ。

「それは不可能だ。誰もそんな少量の水では生き残れない」とアイロレスは考えた。それがきっかけになって、このプロジェクトが生まれた。「ヒトは何故これほど過酷な環境で生き残ることができるのだろうか? それは彼らがその環境に適応しているからだ。」

プロジェクトで研究チームは、都市、村、そして伝統的遊牧生活をするトゥルカナの人々について、10のバイオマーカーを測定した。そして、伝統的な遊牧生活を送る人々や村で暮らす人々では10のバイオマーカーすべてが優れていることを発見した。

けれども、都市部に引っ越した人々は、心臓代謝、肥満、血糖、心疾患、血圧などのすべてのバイオマーカーが悪化していた。しかも長く都市に住んでいる者ほど悪くなる傾向があったという。

「我々は結局、我々が期待していたものをみつけた」とアイロレス助教授は言った。「炭水化物ベースの食事に移行すると、彼らは病気なるということだ。そこには累積的な効果があり、都市環境、つまり進化的にミスマッチな環境を経験することが長いほど健康に悪影響を及ぼした。」

アイロレス助教授は、本研究が、たんぱく質ベースの食事を支持するものと解釈されるべきではない、と警告している。

「トゥルカナ研究の最も注目すべき点のひとつは、あなたや私がトゥルカナ族の食事を摂ったら、私たちはすぐに病気になるだろうということである。代謝の健康のカギは、我々の食事と活動レベルを祖先のものと一致させることかもしれない。けれどもなにが最も重要かを決定する必要はあるだろう。」

出典は『サイエンスアドバンス』。 (論文要旨)      
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