2020.10.19
, EurekAlert より:
WikipediaやWikihealthといったウェブサイトで出会う医療や健康に関する記事に対して、人々は懐疑的なようだ、という研究報告。
この研究結果は、これらのサイトでは専門家以外が簡単に健康情報を追加、編集できるのではないかと心配している保健の担当者にとっては朗報となるかもしれないが、研究者らは、医療専門家がこれらのサイトの情報をキュレートしたとしても、懐疑性を減らすことはできない、とつけ加えている。
「健康に関する誤った情報に対する懸念が、特に現在、COVID-19によって浮き彫りになっている」と著者の1人でペンシルバニア州立大学のS.シャム・サンダー氏は述べている。「誰もが健康関連情報を投稿できるようになった今、これらのクラウドソーシングによるウェブサイトの情報が人々に影響を与える可能性を懸念するのは当然のことである。我々の研究結果によれば、医療従事者はこれらのサイトについてあまり精力的に取り組む必要はない。今回の研究参加者のような一般の人々は、大衆を信頼したり、彼らが提供する情報を包括的なものだと考えたりしないからだ。」
先行研究において研究者らは、人々が「いいね」やリツイートを多く獲得する投稿のような大衆の中で人気があるオンラインコンテンツを信頼する傾向があることを見出している。これは、バンドワゴン効果とも呼ばれる現象である、と筆頭著者であるヒューストン大学のヤン・ファン助教授は話す。しかしファン氏によれば、今回の研究結果が、信頼性に限って言えば、人々は大衆によって承認されたコンテンツと大衆が編集したコンテンツの間に線引きしていることを示唆しているという。
「クラウドソーシングの効果は、バンドワゴン効果とは異なるようだ。クラウドソーシングでは、人々は既にあるコンテンツを「いいね」したり勧めたりするだけではなく、人々自身がコンテンツを生成しているためである。」とファン氏は話す。「そして、今回の研究参加者は、バンドワゴン効果--人々がコンテンツを承認しているだけのとき--と、コンテンツを生成しているときとを、心理的に区別することができた。全体として、参加者は、他の人々が共同で作成したコンテンツを信頼しなかった。」
研究者らは、今回明らかになった別の側面についても語っている。参加者は、コンテンツの編集を可能にするウェブサイトのインタラクティブ機能を認識したとき、クラウドソーシングの健康記事をより信頼した。
「コンテンツの編集者または作成者としての役割を果たすことができるとわかったとき、サイトを管理する感覚を得る。この双方向性を認識するほど、コンテンツをより信頼するようになる。」とファン氏は話す。
サンダー氏によると、この研究結果は、人々が信頼できるコンテンツの情報源として自分自身を信頼している一方で、その信頼を他の人々に拡大することに消極的である可能性があることを示唆しているという。
「あなたが情報源である場合、あなたはコンテンツを追加することができるため、その情報は信頼できると考えるが、他の人もコンテンツを提供できる場合、信頼性は奪われるようだ。」とサンダー氏は話す。
クラウドソーシングされたコンテンツは非科学的な助言や結果を含むように操作される可能性があるため、多くの健康関連の専門家は、彼らの投稿の資格情報が記事の信頼性を高める可能性があると考えるだろう。しかし、研究者らは、コンテンツが医師などの専門家によって編集あるいは作成された場合でさえも、参加者はその情報が読者にとって信頼できるとは考えないことを見出した。情報源が専門家であることを示すため、研究者らは研究で使ったウェブサイトに医師のシンボルと名前、肩書きを追加した。
「専門家情報を追加することによって、コンテンツの背景にゲートキーパーがいるという認識が高まった。言い換えれば、専門家情報によって、人々はそのクラウドソーシングサイトがより管理されていると考えるようになったが、信頼性の判断には影響しなかった。」とサンダー氏は述べている。
研究者らは、この調査結果がクラウドソーシングサイトの健康コンテンツの信頼性の欠如を示しているため、これらのサイトの管理者はインタラクティブ機能を追加し、より目立つデザインにする必要があるかもしれない、とつけ加えている。インタラクティブ機能は、情報源とコンテンツに対する利用者の肯定的な認識を高め、クラウドソーシングサイトの信頼性を高める可能性がある、と彼らは述べた。
今回の研究は、192名の参加者を対象に行われた。様々な条件を検討するために、研究者らは8種類のバージョンの「Healthpedia」と称するウェブサイトを作成し、日焼け止め製品の悪影響または低温殺菌牛乳の潜在的なリスクについて取り上げた記事を参加者に提供した。このウェブサイトは、クラウドソーシングの影響を調べるため、WikipediaやWikiHowといった一般的なクラウドソーシングサイトのインターフェイスを模倣し作成されている。一部のバージョンでは医師がコンテンツの編集者であることを示し、他のバージョンでは編集機能を提供して、コンテンツが45人以上の人々によって共同で作成されたことを示した。
研究者らは、情報源としての大衆の信頼性をより検討できるよう、コンテンツは意図的に意見のわかれる内容に作成したという。彼らは、今回の記事はやや風変わりであったため、今回の参加者の認識がより日常的な健康コンテンツに当てはまるかどうかを検討したいとしている。
出典は『健康通信』。 (論文要旨)
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