2020.10.15
, EurekAlert より:
立ち上がったり歩き回ったりするだけで健康に良い効果が得られるようだ、という米国カリフォルニア大学サンディエゴ校の2つの新しい研究報告。
運動やその他の中程度から激しい身体活動(MVPA)が、心臓病、2型糖尿病、いくつかのがん、アルツハイマー病、認知症など、加齢に伴う多くの慢性疾患のリスクを軽減することは十分に立証されている。けれども、2020年10月12日付で『老年医学雑誌シリーズA』に発表された研究では、研究チームは、じっと立っているだけで死亡リスクが低くなることを発見したという。
アンドレア・ラクロワ教授率いる研究チームは、女性健康イニシアチブと協力して、63歳から97歳までの約6,000人のアメリカ人女性の活動レベルを観察した。参加者は、研究グレードの加速度計を7日間着用して、座ったり、立ったり、移動したりした時間を正確に測定した。
データ解析の結果、立っている時間が最も多かった参加者は、最も少なかった参加者と比較して、死亡のリスクが37%低かったという。最も多い群は1日あたりほぼ90分間立っていたが、死亡リスクの低下は1日あたりわずか30分間立っているだけでも観察された。参加者が立っていると同時に動き回っている場合には、立っていることのポジティブな効果はさらに強かったという。
2020年10月12日付で『BMJオープン・スポーツ&エクササイズ医学』に発表された別の研究では、研究チームは、テクノロジーによる影響が最小限であるマラウイ農村部の農家の調査の一環として収集された身体活動データを使用し、米国人の生活習慣と比較した。
この比較により、チームは、座位中心時間と身体活動に対するテクノロジーが支配的な生活習慣の潜在的な影響を検討した。
その結果、米国の参加者と比較して、マラウイ国民にはかなり高レベルの身体活動がみられたという。具体的には、米国人はマラウイ人と比較して、毎日2時間近く多い座位中心時間を過ごしていた。
調査は、アフリカ南東部に位置するマラウイのゾンバ地区とンチェウ地区の農業従事者を対象とした。対象者のほぼ全員が自宅で電気を欠いており、自動車を所有していなかった。
対照的な生活習慣を持つ2集団の活動レベルの違いを定量化するために、研究者は15-85歳のマラウイ人農業従事者414名に7日間毎日加速度計を装着するように依頼した。次に、データを、以前の研究で同じ時間測定された同じ年齢範囲の3,258人の米国人のデータと比較した。
マラウイの成人のMVPAおよび軽度身体活動のレベルは、米国の集団で観察されたものよりも大幅に高く、座位中心時間は低かった。研究チームは、ほぼ同一のデータ収集、スコアリング、および分析を使用して、この結論を出したという。
マラウイの農業従事者では、94%が現行の身体活動ガイドラインの推奨を満たしていたが、米国の集団では55%に過ぎなかった。だが、この結果はマラウイでは別の意味も持っている。マラウイの農業従事者は家庭の食糧安全保障のために懸命に働かなくてはならないのである。
「この研究は、世界中でますます支配的になっているテクノロジー志向の生活習慣の深刻な影響を示唆している」とジェームズ・サリス名誉教授は述べている。
「人間として、我々は活動的になるように設計されており、我々の健康がそれにどれほど依存しているかがわかった。ほとんどの高所得国の人々のためには、我々は彼らが椅子から立ちあがって歩きまわるのを助ける努力をより優先する必要がある。低所得国の活動性の高い人々のためには、食料安全保障がより優先度が高いのである。」
出典は『老年医学雑誌シリーズA』。 (論文要旨)
|
|